オグリの里

競馬場救ったオグリ里帰り

写真:スタンドを埋めたファンの前で、アンカツさん(右)と対面するオグリキャップ=2005年4月

スタンドを埋めたファンの前で、アンカツさん(右)と対面するオグリキャップ=2005年4月

 11年前の2005年4月、笠松競馬場に伝説の「オグリコール」が再び響き渡った。当時、廃止の危機にひんしていた笠松競馬をよみがえらせる「救世主」として里帰りした名馬オグリキャップ。その雄姿にファンは熱狂し、関係者は「笠松復興」への大きな一歩を踏み出した。

 バブル経済崩壊後の1993年度以降、笠松競馬の馬券販売は右肩下がりが続き、50億円以上あった基金も次々と取り崩していた。2004年9月には県の第三者機関から「経営は既に構造的に破綻しており、競馬事業を速やかに廃止すべき」とする厳しい提案があり、関係者に激震が走った。

 「まだ累積赤字もないのに」と驚いた騎手・調教師ら。笠松に競走馬を供給する北海道の馬産地有志や全国のファンらとともに「オグリを生んだ競馬場をつぶされてたまるか」と立ち上がった。「笠松競馬を未来につなげるつどい」ではアンカツさんらが「存続のために後押しを」と呼び掛け、調教師の妻たちでつくる「愛馬会」も署名活動などで存続を力強く訴えた。

写真:馬主、調教師、厩務員らオグリキャップゆかりの人らも出迎えた里帰りセレモニー。拍手とオグリコールが響いた

馬主、調教師、厩務員らオグリキャップゆかりの人らも出迎えた里帰りセレモニー。拍手とオグリコールが響いた

 思い切った経営改善が進められず、バブル時代そのままの放漫経営を続けてきたツケが回ってきたようだった。競馬場の大半が借地であったこともあり、90%以上「廃止」に傾きかけていたが、競馬場関係者やファンらの存続への熱い思いは、県地方競馬組合を動かした。05年度はレース賞金、手当などが大幅にカットされた上、「赤字転落なら即廃止」という厳しい条件の下、1年間の期限付きでの存続が決まった。

 オグリキャップの里帰りは、笠松競馬の再生事業の一環。北海道の優駿スタリオンステーションを旅立ち、オグリキャップ記念シリーズに合わせ、4月25日から2週間、羽島郡笠松町の円城寺厩舎に滞在した。JRA勢を圧倒する強い競走馬に育ててくれた古里・笠松に恩返しする形で、元気な姿を多くのファンに披露。永続への「希望の光」を放ち、競馬場再興への気運を一気に高めてくれた。

2週間の里帰りを終えて、北海道に向けて専用厩舎を出るオグリキャップ

2週間の里帰りを終えて、北海道に向けて専用厩舎を出るオグリキャップ

 オグリキャップ記念当日の里帰りセレモニーでは、熱狂的な歓迎を受けた。全国から駆け付けたファンで埋まったスタンドからオグリコールが響く中、笠松での主戦騎手だったアンカツさんも再会した。有馬記念優勝の翌年1月、引退式で騎乗して以来の笠松での対面。「若々しくて元気そう。オグリ人気はさすが」と再会を喜ぶとともに、存廃に揺れる笠松の復興をファンに呼び掛けた。ゴール前では一瞬「ここでまた走るのかな」と、現役時代を思い出したかのように入れ込んだ姿も見せたオグリ。JRAに移籍していたアンカツさんは「今あるのはオグリのおかげ」との言葉通り、笠松での雄姿に背中を押されたように、2日後の春の天皇賞を13番人気のスズカマンボで見事に優勝を飾った。

 「里帰りを活性化の起爆剤に」と期待を込めた関係者の願いは通じた。その後も永続への道は険しく、存廃問題は何度も浮上したが、「キャップが育った地方競馬の聖地をなくすな」と、笠松や馬産地の関係者、全国のファンの応援が大きな力となり、騎手や厩務員らは賞金や手当の大幅カットにも耐えて、存続を勝ち取ってきた。キャップがいなかったら、小さな競馬場は間違いなく、つぶれていただろう。

■28日にオグリキャップ記念

 今年で25回目を迎えるオグリキャップ記念(地方全国交流レース)は28日、笠松競馬の第10レースで開催される。キャップが天国に旅立ってから6年。JRAでは、追悼のメモリアルレースが開催されたことがあるが、「オグリキャップ」を冠にした重みのある記念ースが開催されるのは、ここ笠松だけ。ラストランとなった有馬記念と同じ2500メートルに、スタミナ自慢の10頭が出走する。全国からの遠征馬5頭は強力で、高知のリワードレブロンが史上初の3連覇を狙う。笠松からはタッチデュール、クワイアーソウルら4頭が迎え撃つ。笠松勢の優勝は2009年のクインオブクインが最後で、地元の意地を見せたい。枠順は次の通り決まった。

28日❿R オグリキャップ記念(SPT)
    (2500メートル、10頭)発走16時05分
                  騎手
@1ウォースピリッツ(笠松) 池田敏樹
A2ディアジースター(笠松) 佐藤友則
B3オグリタイム(北海道)  今井貴大(愛知)
C4タッチデュール(笠松)  藤原幹生
D5ベルライン(愛知)    丸野勝虎
E6クワイアーソウル(笠松) 東川公則
F7リワードレブロン(高知) 永森大智
F8ヴァーゲンザイル(兵庫) 大柿一真
G9アウトジェネラル(大井) 矢野貴之
G10グルームアイランド(金沢) 吉原寛人

 北海道から参戦するオグリタイム(牡6歳)は、華麗なるオグリ一族の血脈を受け継ぐ1頭。オグリキャップの母はホワイトナルビーで、その第9子オグリビートの孫がオグリタイム。父タイムパラドックス、母はオグリビーナスで、馬主は小栗孝一さんの長女・江島勝代さん。2歳時に南部駒賞(水沢)を制覇し、昨年はJBCクラシック(大井)やマイルチャンピオンシップ南部杯(盛岡)にも出走した。

 第5レースで「ありがとうオグリキャップ杯」、第9レースでは「小栗孝一メモリアル」も開催される。熊本地震の被災地支援のため、笠松競馬所属騎手、調教師による災害義援金の募金活動が27〜29日の3日間、最終レース終了後に笠松競馬場正門付近で実施される。温かい支援をよろしくお願いします。

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コメント一覧

ミーチャン大好き / 2016.4.28
岐阜新聞様このようなコラムをありがとうございます。笠松競馬は東海地方の誇りです!!これからもがんばってください。

江島 勝代 / 2016.4.27
懐かしい話が掲載され、楽しく拝見させていただいています。
我が家ではオグリキャップは‘オグリ‘ではなくキャップでした。持ち馬全部がオグリ・・・とついているので、キャップやローマンが呼び名でした。
今年のオグリキャップ記念にキャップを大叔父に持つタイムが出走します。キャップ記念に持ち馬が出ることは、父の悲願であっただろうと思います。
娘として父の意志を継ぐことが馬一筋に人生をかけた父に対する最大の供養だと考え、現在の持ち馬たちが無事駆け抜けることを願ってやみません。
当時を含め今なお応援して下さっている皆様に深く感謝いたします。有難うございます。そしてこれからもよろしくお願いいたします。

小栗孝一 長女 勝代

マサカズ / 2016.4.27
素朴な疑問。そんなにが大事なレースなら、なぜGWの4/29金に行わない?今だって笠松の経営はそう順風でもないはずで、企業努力が必要なはず。
第一、オグリキャップは当時バブル景気の中死ぬほど働いていたサラリーマンになぞらえて、24時間働く馬として一世を風靡していた。それが、売り上げに大きく寄与するサラリーマンに背を向けてのド平日に行なうとは。まあ、潰したい勢力っというのもいるのかもしれないけどね。その辺も含め、一体どういうことなのか、もっと突っ込んだ取材をして!!!!!!

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