オグリの里

オグリコール、永遠の響き

写真:ラストランとなった1990年の有馬記念を制覇したオグリキャップ

ラストランとなった1990年の有馬記念を制覇したオグリキャップ

 今年も有馬記念の季節となり、あのオグリコールが永遠の響きとなって聞こえてきた。

 1990年12月23日、中山競馬場には有馬記念史上最多の17万7779人が詰め掛け、限界説がささやかれ、引退レースとなったオグリキャップが底力を発揮して、ドラマチックな優勝を果たした。大観衆は、完全燃焼の走りを見せた名馬の頑張りに興奮し、絶叫した。ラストランだけに感動は大きく、日本の競馬史上に輝く最高のシーンとなった。

 ファン投票1番人気のオグリキャップには、安田記念で圧勝したパートナー、武豊騎手が騎乗。テレビ実況でレースを振り返ると、好スタートから中団を進み、3、4コーナーでは芦毛の馬体がいい感じで上がっていった。大外から顔をのぞかせると、胸が高鳴った。最後の直線では「オグリ先頭に立つか、オグリ先頭」の声に、「ライアン(メジロライアン)」と解説の大川慶次郎さん。「オグリ1着、オグリ1着。右手を上げた(実際は左手だったが)武豊。見事に引退の花道を飾りました。スーパーホースです」

写真:武豊が騎乗したオグリキャップのウイニングランでは、オグリコールが響き渡った

武豊が騎乗したオグリキャップのウイニングランでは、オグリコールが響き渡った

 ウイニングランで場内を1周。「もう駄目かと思っていたのに、オグリ、お前はよく頑張って走ったよ」。単勝5.5倍で4番人気だったが、馬券が当たった人も外れた人も関係なく、競馬ファンの気持ちが一つになり、大合唱となった。人波が大きく揺れ、泣いている女性ファンの姿もあった。「オグリ、オグリ」の大合唱は、メインスタンド前で武豊が右手を高く突き上げると最高潮。「闘志に火が付きましたね」「レースは完璧、よくやりましたね」と実況席。担当厩務員の池江敏郎さんが駆け寄り、死力を尽くして駆け抜けた愛馬をねぎらった。

 秋の天皇賞6着、ジャパンカップ11着と惨敗。「オグリはもう終わったんじゃないか」「有馬で走らせずに引退させるべきでは」といった論調も高まっていたが、天皇賞は1着と0.7秒差、ジャパンカップは0.9秒差と実はそんなに負けてはいなかった。「ゴール板の位置がよく分かっていた」と笠松時代の鷲見昌勇元調教師が語っていたように、頭のいい馬だった。「競走馬として、自らのゴール板」も察知していたかのような鮮やかなラストシーンで、有終の美を飾った。

 武豊騎手は「完調時に比べれば7、8割程度だったが、レース前から勝つ可能性は十分あると思っていた。3コーナーで手応えを感じたし、走ってくれると信じた。僕にとってもこの勝利は大きい」と、名馬とのコンビでつかんだ有馬記念優勝を喜んだ。 

 夜のテレビニュースでは、「オグリコール」のシーンが何度も流され、競馬をやらない人からも「感動した」という言葉を聞いた。地方から中央へと高い壁を突き破って駆け抜け、笠松で育った野武士が最後に再び天下を取った。この有馬記念のレース映像は何度見ても、何度聞いても、なぜか鳥肌が立ってくる。ディープインパクトやオルフェーヴルは、オグリより強い勝ち方をして3冠馬になったが、オグリほど、人の心に勇気を与え、世代を超えて愛され続ける馬はいない。

写真:笠松競馬場での引退式でも、オグリコールと拍手の中、安藤勝己元騎手の騎乗で正面スタンド前を駆け抜けた

笠松競馬場での引退式でも、オグリコールと拍手の中、安藤勝己元騎手の騎乗で正面スタンド前を駆け抜けた

 バブル景気真っただ中だったこの年の日本ダービーには19万6517人が来場。逃げ切った優勝馬アイネスフウジンに騎乗した中野栄治騎手をたたえる「ナカノ」コールが響き渡った。有馬記念でも、競馬がギャンブル性を超越したスポーツとして、熱いファンの心をつかみ、オグリコールとなって沸騰した。2着メジロライアン、3着ホワイトストーンは日本ダービーと同じ顔触れだった。笠松での引退式やお別れ会、妹のオグリローマンの桜花賞優勝でもオグリコールは響き渡った。

 今年の有馬記念(25日・中山)は5年ぶりの「クリスマス有馬」となる。過去には、昭和最後の名勝負となった1988年、オグリキャップがタマモクロスを破って世代交代を果たした。それ以来、クリスマス有馬ではナリタブライアン(94年)、ハーツクライ(2005年)、オルフェーヴル(11年)といったスターホースが優勝。3、4歳馬の強さが際立っている。

写真:25日の「クリスマス有馬」に向けて、ムードが高まる中山競馬場

25日の「クリスマス有馬」に向けて、ムードが高まる中山競馬場

 枠順が決まり、キタサンブラック(武豊騎手)が、4連勝中と得意の1枠1番を引き当てた。ジャパンカップのように逃げて、菊花賞馬のサトノダイヤモンド(ルメール騎手)が追う展開で、一騎打ちムード。ハーツクライがディープインパクトを破った05年のような「ルメール×武豊」対決が再び見られるか。3連単2頭軸で、相手には6頭。過去のGT実績を重視して、まずは宝塚記念優勝のマリアライトと、GT堅実駆けのミッキークイーンの牝馬2頭。昨年覇者ゴールドアクター、2着を返上したいサウンズオブアースも圏内。穴ならデニムアンドルビーとシュヴァルグラン。

 有馬記念といえば世相馬券。米同時多発テロがあった01年には、菊花賞馬のマンハッタンカフェが勝ち、アメリカンボス2着で大万馬券になった。今年は「米大統領にトランプ氏」の大番狂わせに、日本では流行語大賞「神ってる」の波乱含みの年でもあり、菊花賞馬のサトノダイヤモンドから人気薄の馬に流す手も。サトノ軍団はGT戦線で神ってる躍進ぶりで、中山競馬場にルメールコールは響くのか。ウイニングランでは、オグリコールを体感した武豊騎手へのユタカコールの大合唱が絵になる。馬主・北島三郎さんとのデュエット宣言もあって、師走の空に「まつり」が響き渡るか。

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筆者プロフィール

【ハヤヒデ】
80年代から笠松競馬を愛し、オグリキャップの走りに感動した競馬ファンの一人。岐阜新聞社に勤務。