オグリの里

「職業 競走馬」だったキャップ

写真:2005年、笠松競馬復興の救世主として里帰りしたオグリキャップに「お帰り」と声を掛け、笑顔を見せる初代馬主の小栗孝一さん

2005年、笠松競馬復興の救世主として里帰りしたオグリキャップに「お帰り」と声を掛け、笑顔を見せる初代馬主の小栗孝一さん

 「職業 競走馬」という格好いい響き。笠松から中央へと、大きな格差と厚かったはずの壁を、口笛を吹きながら?淡々と駆け抜けたオグリキャップ。その名馬の仕事の流儀に迫ったNHK「プロフェッショナル」。スポーツ心臓や「ONとOFF」の切り替えなど幅広い視点で、競走馬の「プロのアスリート」としての魅力が伝えられた。オグリキャップファンの多さが再認識でき、若い世代や普段は競馬をやらない人からの反響も大きかった。

 全編を通じて、初代馬主・小栗孝一さんのキャップへの愛情があふれていた。妻の秀子さんや長女の勝代さんから、小栗さんの生い立ちや愛馬を手放した複雑な思いを聞くことができた。

 血統は二流とされたが、「笠松で、1600メートルまでよく走る馬を」と、父ダンシングキャップに母ホワイトナルビーの子を望んだ小栗さん。この配合での決断があったからこそ、キャップというスーパーホースが誕生した。中央入り後も「自分のオグリの名前が残ってくれただけでもうれしい」と、キャップが出走するレースは全て競馬場に足を運んだ。ラストラン前には「これでは、終わらない」と愛馬を信じ、1着でのゴールとオグリコールに「ありがとう」の一言。時を超えて、天国に旅立った人馬は再会を果たしたに違いない。

 キャップに名手が乗れば、負けるはずがなかった。笠松時代に騎乗し、7連勝した安藤勝己さんは、「(1度抜かれてのハナ差勝ちに)負けたくないという意地や根性があった」。1988年の有馬記念を制した岡部幸雄さんは「いつも通り淡々とぶれないで仕事をこなした。ゲート前での武者震いに安心した」。90年の有馬記念で有終の美を飾った武豊騎手は「前のレースでわざと負けてストーリーを描いたかのようで、人を引きつける魅力的な馬だった」。名手それぞれの証言には重みがあった。ラストランの有馬記念のように、パドックでもグイグイと引っ張る姿を見せて気持ちが前向きな時は本当に強かった。

 キャップが笠松でデビューした当時の様子も、鷲見昌勇元調教師、青木達彦元騎手や装てい師の証言で聞くことができた。普段はダラーとしていて走らなくても、実践では沈み込む重心の低い走りで強さを発揮。笠松仕込みの調教、レース間隔が中央での活躍につながった。オグリキャップ像やキャップが育った厩舎の馬房も登場し、笠松発のサクセスストーリーを実感できた。

写真:オグリキャップ最後の産駒ミンナノアイドルと、佐藤牧場(北海道)を訪れた小栗孝一さんの家族ら

オグリキャップ最後の産駒ミンナノアイドルと、佐藤牧場(北海道)を訪れた小栗孝一さんの家族ら

 キャップ最後の産駒で、繁殖牝馬のミンナノアイドルは10歳。長男ストリートキャップが中央でまずまずの活躍を見せており、順調なら今年5月にも次男が誕生する予定だ。安産祈願のお守りをいっぱい手にした牧場生産者の佐藤信広さんの願い通り、元気な子馬が生まれるといい。キャップとローマンという中央のGT馬2頭を生んだ、地方馬としては奇跡的だったホワイトナルビーの良血を脈々と受け継いでいってほしい。

 今年最初の中央GT「フェブラリーS」は19日、東京競馬場で行われる。ダートレースで、1998年からGTに昇格し、かつては地方馬が挑戦することも多かった。もしキャップが出走できていたら、アグネスデジタルのように芝、ダートの両方でGT制覇を果たしていたことだろう。笠松勢では、ミツアキタービン(東川公則騎手)が2004年に、1着アドマイヤドン(安藤勝己騎手)から0.2秒差の4着と大健闘した。

 99年には岩手のメイセイオペラが、菅原勲騎手の好騎乗でフェブラリーSを制覇した。地方所属馬の中央競馬GT優勝は最初で最後。菅原騎手のGT制覇も、地方騎手として唯一の快挙となっている。

メイセイオペラは昨年、22歳で亡くなったが、地方競馬全体を盛り上げた功績がたたえられ、イナリワン(大井から中央移籍、GT3勝)とともにNARグランプリの特別表彰馬に選出された。地元・岩手などでは、メイセイオペラの記念碑建設に向けた募金活動も行われている。

写真:昨年の笠松グランプリをラブバレットで制覇した菅原勲調教師。騎手時代には、フェブラリーSをメイセイオペラで優勝している

昨年の笠松グランプリをラブバレットで制覇した菅原勲調教師(左)。騎手時代には、フェブラリーSをメイセイオペラで優勝している

 菅原騎手は地方競馬通算4000勝を達成し、現在は調教師として活躍中。昨年11月の笠松グランプリでは、管理するラブバレット(山本聡哉騎手)で圧勝。笠松の地で優勝インタビューを受ける菅原調教師の姿は感慨深いものがあった。「スピードが持続でき、1200から1400が良さそう。笠松グランプリにはまた来て3連覇を目指したい」とラブバレットの成長を期待。1600メートルのフェブラリーSへの出走には至らなかったが、今後もダートグレード競走などで地方競馬を盛り上げてほしい。

 今年のフェブラリーSは大混戦。2014、15年を連覇したコパノリッキーには武豊騎手が騎乗。このコンビでGT4勝と相性抜群で、先行してリズム良く走れば実績上位で怖い存在。ここ4戦連続2着と「シルバーコレクター」の雰囲気が漂うベストウォーリアに、末脚勝負のサウンドトゥルー、カフジテイク、ノンコノユメも有力。

 このほか、昨年開業したばかりの寺島良調教師(本巣郡北方町出身)が管理するキングズガードもフェブラリーSに挑戦。1月の根岸S(GV)では、最後方から4着に食い込んでいる。寺島厩舎としては初めてのGT挑戦となり、高配当が期待できる1頭として注目したい。

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筆者プロフィール

【ハヤヒデ】
80年代から笠松競馬を愛し、オグリキャップの走りに感動した競馬ファンの一人。岐阜新聞社に勤務。