オグリの里

地方競馬、V字回復

写真:馬券販売が伸びている笠松競馬。ゲートオープンで飛び出す競走馬に声援を送るファン

馬券販売が伸びている笠松競馬。ゲートオープンで飛び出す競走馬に声援を送るファン

 今年になって、地方競馬では「地殻変動」ともいえる画期的な動きがある。ナイター開催の高知競馬の馬券販売額が、1日3億円または4億円を突破する日も珍しくないのだ。ナイターだから、平日の入場者は仕事帰りのファンら300〜400人と少なく、大半は自宅などでのインターネット投票によるものだ。

 笠松競馬でも馬券販売は1日2億円前後となり、3億円売れる日もある。1億円前後に落ち込んでいた数年前までに比べて倍増。前年度比でも20%以上の伸びを続けており、4年連続の黒字は確実。苦しい時代に耐えて生き残った各地方競馬は、うれしい「V字回復」を遂げている。

 高知競馬といえば、最悪だった頃の1日の販売額は4000万円程度で、笠松以上に厳しい経営状況だった。2004年には廃止寸前にまで追い込まれていたが、関係者が一丸となって「ハルウララ」というアイドルホースを登場させた。100連敗以上で1度も勝ったことがないことを逆にアピール。その連敗記録とアンバランスな愛らしい馬名が全国の競馬ファンのハートを射止めた。

写真:ハルウララの単勝馬券は「交通安全」のお守りにもなった。勝ったのはフアストバウンスで、馬連も外れ馬券に

ハルウララの単勝馬券は「交通安全」のお守りにもなった。勝ったのはフアストバウンスで、馬連も外れ馬券に

 ハルウララが出走した2004年3月の「YSダービージョッキー特別競走」には武豊騎手が騎乗し、起死回生の一撃となった。ハルウララの単勝馬券は「当たらない」ことから、外れ馬券を「交通安全のお守り」にしたファンも多かった。頼まれた分も含めて、笠松場外で単勝馬券を100円ずつ10枚、馬連でも流して買った覚えがある。連番10枚なら下1桁が必ず当たる宝くじよりも、はるかに当たる可能性が低い馬券だった。

 結果は10着に終わったが、ハルウララが特効薬となったこのレースの馬券販売額は何と5億円を突破。単勝馬券も約1億2000万円と、中央の重賞レース並みに売れた。入場者は1万3000人を記録。この年、高知競馬はハルウララ効果で何とか黒字を確保し、存続につながった。

 あれから13年、見事な復興を遂げた高知競馬。1月25日(水曜日)の実績で比較してみると、笠松の入場者は816人で、馬券販売額は約1億9000万円。同じ日、高知競馬は入場者376人だったが、馬券販売額は約4億9300万円と爆発的に売れた。園田競馬が1617人で約2億8600万だったことからしても、高知は突出していた。

写真:「夜さ恋ナイター」とインターネット投票で、V字回復を遂げている高知競馬

「夜さ恋ナイター」とインターネット投票で、V字回復を遂げている高知競馬

 この数字は2009年に始まった「夜さ恋ナイター」と、インターネット投票の連携でたたき出されたものだ。JRA「IPAT」による地方競馬向けネット投票が威力を発揮。冬場は南関東や門別でのナイター競馬が休止にもなり、高知がナイターファンの受け皿となっている。日曜日には、中央競馬終了後の午後4時半ごろから地方競馬に連動し、ネット投票のお客さんが急激に増える。「中央のレースでの負けを取り返したい」と熱くなったファンが、地方競馬にも手を出すパターンも多いだろう。

 馬券のネット販売は、オッズパーク、楽天競馬、SPAT4もある。05年、ライブドアが、笠松競馬への民間参入の一環としてネット販売を狙っていたが(実現はならず)、その頃から出馬表などを充実させることで、地方競馬のネット投票は急速に普及していった。一昔前は、馬券は競馬場でしか買わない馬券おやじも多かったが、今は家でごろりとなってネット競馬を楽しむ時代になってきた。

 高知競馬での「売り上げ10倍増」など馬券販売額の急激な右肩上がり。先行きが怖いほどの地方競馬の回復傾向だが、地方・中央が連動した馬券革命ともいえるネット投票は、なぜこれほどまでに伸びているのか。

 一因としては、慢性的だった不況感が和らぐとともに、インターネット世代による高齢化社会が本格化したことが挙げられるのでは。笠松など平日開催が基本の地方競馬ファンの多くは高齢者で、ゆとりのある時間とそこそこの馬券代を持ち合わせている。ネットを楽々と使いこなす年代にもなり、競馬を手軽に楽しむ人が増えたということだ。「土曜、日曜の中央競馬だけでなく、平日も競馬を」という若者を含めたファンが、地方競馬のネット投票に流れているのだ。

 ネット投票にはライブ映像が付きものだ。パソコンやスマホでの動画配信もあるが、スカパーの「地方競馬ナイン」では、名古屋、園田、高知、門別などのライブ中継を、年間を通して全レース放送している。笠松競馬のスカパー中継はこれまで、オグリキャップ記念などビッグレースに限られていたが、今年から他場と競合しない月曜、金曜の中継が始まった。火曜〜木曜には、園田での開催が多いが、笠松の中継もあれば、両方の馬券を買うファンも多いはずだ。馬券販売のアップにもつながるはずで、笠松競馬の全レース中継を期待したい。

 ナイターといえば、午後9時以降に7レースほどが無観客で行われ、電話やネット投票のみの「ミッドナイト競輪」も全国的に好調のようだ。名古屋競馬は昨年末、弥富市への移転計画がほぼ決まり、ナイター開催案も浮上している。笠松では、健康を兼ねて昼間のレースに足を運ぶ競馬場派のファンがまだまだ多い。ナイターでは入場者の激減は避けられないし、駅や住宅街も近いことから夜間開催には問題も多い。経営改善による施設改修が進んでも、笠松ではナイター競馬が行われることはなさそうだ。

このコラムに対するコメントをお寄せください

ネーム:(必須)
メールアドレス:(必須・半角英数)
コメント:

※投稿は承認後、順次掲載します。そのためすぐには反映されません。

※メールアドレスが公開されることはありません。

「オグリの里」一覧

〜バックナンバー〜

※項目をクリックでリスト展開。

筆者プロフィール

【ハヤヒデ】
80年代から笠松競馬を愛し、オグリキャップの走りに感動した競馬ファンの一人。岐阜新聞社に勤務。