オグリの里

寺島調教師(岐阜出身)がJRA重賞初V

写真:キングズガードで重賞を初制覇。表彰式で喜びをかみしめる寺島良調教師

キングズガードで重賞を初制覇。表彰式で喜びをかみしめる寺島良調教師

 「キングズガードが抜けた、リードは2馬身、先頭でゴールイン」。JRAの重賞レースで、管理する馬が後方から豪快に差し切って優勝。岐阜県本巣郡北方町出身の若き調教師に歓喜の一瞬が訪れた。

 9日、中京競馬場で行われた「プロキオンS」(GV、ダート1400メートル)。36歳になったばかりの寺島良調教師(栗東)が、5番人気キングズガード(牡6歳、藤岡佑介騎手)でうれしい重賞初勝利を飾った。昨年秋にJRA調教師としてデビューし10カ月での快挙。キングズガード(父シニスターミニスター、母キングスベリー)も初の重賞制覇で、ダート界のGT戦線をにぎわせる新たなヒーローに躍り出た。

写真:優勝馬キングズガードと寺島良調教師(右)、藤岡佑介騎手

優勝馬キングズガードと寺島良調教師(右)、藤岡佑介騎手

 寺島調教師は昨年7月に亡くなられた田中章博調教師から、馬とスタッフを引き継いで9月に開業した。初めての重賞Vに「早く勝ててホッとしている。田中先生にいい馬を任せていただき、昨秋から重賞で使ってきて、どこかで勝ちたいと思っていた。左回りは未勝利だが、藤岡佑ジョッキーがうまく乗ってくれた。中京ダートは前残りも多いコースだが、馬の力が上回った」。追い切りでも自ら手綱を取って万全に仕上げ、狙い澄ました重賞レースでの完勝劇となった。

 藤岡佑騎手も「いい脚を使ってくれて強かったですね。開業した時から乗せてもらっていた馬で勝ててうれしいです」。ラスト3ハロン(600メートル)をメンバー最速の35.6秒。内から外へ馬群を縫うように抜け出し、グイグイと伸びて会心の騎乗となった。優勝馬との記念撮影に続いて、大勢のファンの前で藤岡佑騎手とにこやかに握手した寺島調教師。表彰式では、重賞制覇の喜びをかみしめながら、感無量の表情だった。

写真:大勢のファンの声援を受け、表彰式に向かう寺島良調教師(左)と藤岡佑介騎手

大勢のファンの声援を受け、表彰式に向かう寺島良調教師(左)と藤岡佑介騎手

 実家が書店だった寺島調教師は、中学生の頃にゲームやテレビで競走馬に興味を持ち始めた。桜花賞に挑んだライデンリーダーで笠松競馬も知っていたが、関心は中央競馬に向いていた。岐阜北高校で野球部に所属し、守備はサード。「ドラゴンズファンでしたが、プロには行けないし…。競馬が好きだったので、騎手にはなれないが、調教師を目指そうと。北海道大学に行けば馬に乗れるはず」と、入学後は馬術部にも入って主将を務めた。大学に近い札幌競馬場では、ゲート裏で競走馬の「放馬止め」をするバイトにも励んだという。

 牧場勤務を経て、栗東トレーニングセンターで厩務員から調教助手(大久保龍志厩舎で7年半、松田国英厩舎で2年半)となり、2歳時から世話をしたアサクサキングスは菊花賞馬に輝いた。調教師試験は3度目の挑戦で15年に合格した。

 プロキオンSの翌日には、国内最大の競走馬市場「セレクトセール2017」(北海道)に、馬主さんたちと参加。1歳馬3頭が落札され、寺島厩舎で預かることになる。これまでは、田中元調教師から受け継いだ馬を仕上げてレースに挑んできたが、「来年の2歳世代からは、最初からやらせていただける」と、自厩舎での育成により力が入る。重賞制覇の直後で、セレクトセールでも祝福の声を掛けられ、「これからも、どんどん勝っていかないと」

写真:ダービー調教師への夢を語る国枝栄調教師

ダービー調教師への夢を語る国枝栄調教師

 桜花賞などGTレース5冠馬のアパパネを管理した国枝栄調教師(美浦)も北方町出身で、地元に帰った時にダービー調教師への夢を語っていた。「同じ町ということで、すごく仲良くしてもらい、『どう?』などと声を掛けてもらっている」と寺島調教師。岐阜の小さな町から中央の舞台で挑戦を続けるベテラン、新鋭の2人の調教師。同じ町にある岐阜農林高校の馬術部は4年前、全日本高校馬術競技大会(飛越競技)で準優勝に輝いており、古くからの農耕文化とともに馬との関わりが深い土地柄のようだ。

 寺島調教師は、夏場の調教は早朝3時ごろからで、忙しい毎日が続く。岐阜の実家には正月を含めて年2回ほどしか帰れないという。「寺島書店」を営む実家の家族は「大きいレースを勝ってくれて、一つの山を越えた感じ。この世界は大変ですが、いい馬と厩務員さんらスタッフに恵まれ、大きな1勝になった。これからもつながりを大切にしてほしい」と願う。

写真:プロキオンSを制覇したキングズガード

プロキオンSを制覇したキングズガード

 キングズガードは、秋には地方・中央交流重賞の東京盃(10月4日・大井)などからJBCスプリント(11月3日・大井)の制覇が大きな目標となる。東京盃といえば笠松のラブミーチャンが11年に2着、12年には優勝を飾ったレースでもあり、活躍が期待される。

 寺島厩舎のオープン馬では、ピンポンが中京記念(7月23日)に出走予定で楽しみだ。開業してまだ1年にもならないが、重賞を一つ勝ったことで、馬主ら関係者の見方も変わってくるし、飛躍を期待するファンも増えてくる。07年の日本ダービーでは、アサクサキングスがウオッカに続く2着で悔しい思いをしただけに、「GTを取りたい、ダービーを取りたい」と、夢を大きく膨らませる寺島調教師。挑戦は始まったばかりだが、まだ30代と若く、将来性豊か。ビッグレースに強い名トレーナーの道を歩んでほしい。

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コメント一覧

土岐の人 / 2017.07.15
 JRAに岐阜県出身の調教師がいるとは全く知りませんでした。笠松だけだと、決めつけていました。競馬歴35年(今はネット買いだけ)の私としては、寺島調教師には、GIのレースに、一日でも早く勝利を。

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筆者プロフィール

【ハヤヒデ】
80年代から笠松競馬を愛し、オグリキャップの走りに感動した競馬ファンの一人。岐阜新聞社に勤務。