オグリの里

筒井騎手好調、リーディング2位

写真:リーディング2位と好調の笠松・筒井勇介騎手

リーディング2位と好調の笠松・筒井勇介騎手

 グリーンチャンネルの番組で、全国の地方競馬場を巡る「日本列島ダービーの旅」が放送されているが、「笠松ダービー」だけなくて残念だ。この地区には東海ダービーがあり、名古屋競馬場でのみ開催されている。笠松の現役騎手で「ダービージョッキー」と呼べるのは、筒井勇介騎手(田口輝彦厩舎)ただ一人で、2010年にエレーヌ(山中輝久厩舎)で東海ダービーを制覇した。今年は笠松リーディング上位につけており、飛躍の年となっている。

 笠松所属騎手は15人のうち9人が30代。もう「若手」とは呼んでもらえないだろうが、中堅として働き盛りだ。今年、最もブレークしているのが34歳の筒井騎手で、重賞勝ちはないが、リーディング争いでは昨年の6位から2位に躍進。トップを走る佐藤友則騎手を追う、不気味な存在となっている。

 筒井騎手は静岡県出身で、2002年に笠松デビュー。かつては人気薄の馬で万馬券を運んくれる「穴男」のイメージも強かったが、堅実さが増してきた。昨年76勝(連対率24.5%)だったのが、今年は8月末までに73勝を挙げ、連対率も36.2%と大幅アップ。3着が多いのも特徴で、複勝率は5割を超え、3連複や3連単の馬券を買うファンには欠かせない騎手だ。

写真:昨年の笠松グランプリでは、オグリタイムに騎乗した筒井騎手

昨年の笠松グランプリでは、オグリタイムに騎乗した筒井騎手

 勝利数ランキングでは、2年連続リーディングを目指す佐藤騎手が88勝でトップ。2位で追い掛ける筒井騎手とは「15勝」の差があるが、年末まで4カ月あり、まだ安全圏とはいえない。3〜5位には向山牧騎手、東川公則騎手、吉井友彦騎手のリーディング経験者が続く。

 筒井騎手といえば、やはり女傑エレーヌ。全国を疾風のごとく駆け抜けた活躍ぶりは圧巻だった。気性は激しかったがよく頑張ってくれた馬で、「バネが抜群にいい。地方の3歳馬では敵なしで、中央馬を相手にどこまで走れるか楽しみ。勝利を重ねて笠松競馬を盛り上げたい」と意気込みを語っていた。

 当時はGT馬ラブミーチャンがデビュー2年目で、桜花賞トライアル挑戦などで脚光を浴びていた。笠松の牝馬たちは、元気さを全国にアピール。いずれも山中厩舎で、3歳のエレーヌ、コロニアルペガサス、プティフルリールの3頭は「笠松ガールズ」のキャッチフレーズで、各地の競馬場を転戦。水沢、佐賀の重賞レースでは1〜3着を独占するなど、いまでは考えられない圧倒的パフォーマンス。全国のファンから熱い視線が注がれた。

写真:2010年、筒井騎手とのコンビで年間重賞記録の8勝を挙げた笠松のエレーヌ(右)。園田・のじぎく賞も制覇した(笠松競馬提供)

2010年、筒井騎手とのコンビで年間重賞記録の8勝を挙げた笠松のエレーヌ(右)。園田・のじぎく賞も制覇した(笠松競馬提供)

 エレーヌの記録は「すごい」の一語だ。北海道から笠松の山中厩舎へ転厩後に、快進撃が始まった。9カ月間に地方、中央合わせて全国12競馬場で計20レースに出走。名古屋・スプリングカップで重賞を初制覇し、東海ダービーでは後方から一気に突き抜けた。重賞5連勝を含め、年間重賞勝利数1位タイとなる8勝(地方)を飾る強烈なインパクト。1988年のオグリキャップ(中央7勝、地方1勝)や96年のホクトベガ(中央1勝、統一7勝)に並ぶ記録で、21世紀ではエレーヌ1頭のみだ。

 牝馬競走の振興を図る「グランダム・ジャパン」3歳シーズンでは、初代女王のタイトルを獲得。古馬シーズンにも参戦し、中4日(園田から水沢)、中5日(水沢から佐賀)の過密なレース間隔で出走した。タフな馬だったが、毎回違う競馬場への遠征が続き、疲れがたまっていったのだろう。9月、デビューの地である北海道・門別遠征では13着に敗れ、結果的にラストランとなった。悲しいことに、笠松帰厩後、体調不良から心不全で急死。「悲運のプリンセス」となってしまったが、日本の競馬史に残る名牝だった。

写真:800勝達成セレモニーで、喜びの筒井騎手。佐藤友則騎手がプラカードを持って祝福してくれた(笠松競馬提供)

800勝達成セレモニーで、喜びの筒井騎手。佐藤友則騎手がプラカードを持って祝福してくれた(笠松競馬提供)

 重賞をいっぱい勝たしてくれたエレーヌとの急な別れ。ショックは大きかったが、筒井騎手にとっては、騎手人生を変えてくれた名馬と出会えたことに、感謝の気持ちしかないようだ。けがやスランプの時期を乗り越えて、エレーヌや関係者に恩返しするためにも、騎乗技術を磨いている毎日だ。

 筒井騎手は、中央競馬では06年、笠松のオグリホット(母オグリローマン)で初騎乗(京都・洛南特別)し、13番人気ながら5着と好走した。中央での勝利はまだないが、今年2月には京都で3着があった。同年代で良きライバルでもある吉井騎手も未勝利で、お互いチャンスがあれば中央での初勝利を飾りたいことだろう。

 今年2月には通算800勝を達成した筒井騎手。セレモニーでプラカードを持ってくれた佐藤騎手の前で、「すごく調子が良く、リーディングも狙っていきたい」と宣言。モチベーションを高め、一つ一つ丁寧に乗って結果を出していることが、現在の好成績につながっている。

 8月のお盆開催では8勝を挙げたように固め勝ちもある筒井騎手。ダービージョッキーとしてのプライドを胸に、秋競馬で勝利を積み重ねて、笠松のエースの座を射止めた佐藤騎手を慌てさせる展開になれば、リーディング争いは面白くなる。

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筆者プロフィール

【ハヤヒデ】
80年代から笠松競馬を愛し、オグリキャップの走りに感動した競馬ファンの一人。岐阜新聞社に勤務。