|
これでは希望が見えない。健康保険から医療機関に支払われる来年4月からの診療報酬改定で、政府は医師の技術料に当たる「本体部分」を8年ぶりに引き上げた。だがそれはわずかで、医師不足による地域医療の崩壊が進む中では不十分と言わざるを得ない。
診療報酬は本体部分と薬や医療材料などの「薬価部分」で構成され、2年に1回改定される。2008年度改定では本体部分を0・38%引き上げる一方、薬価部分は1・2%引き下げ、全体では差し引き0・82%の引き下げ。4回連続のマイナス改定になった。
診療報酬は財政再建に取り組んだ小泉政権の5年間、マイナス改定が続き、特に前回は3・16%と過去最大の引き下げだった。このため、各地で医師不足から産科や小児科の診療を閉鎖する病院が相次ぐなど、医療現場の荒廃が進んだ。過疎地などの地域医療は崩壊の瀬戸際といわれる。
にもかかわらず今回の改定議論も「初めに引き下げありき」で始まった。政府は今年夏の来年度予算概算要求基準(シーリング)で、社会保障費約2200億円の抑制を決めたため、大半は診療報酬の引き下げで捻出(ねんしゅつ)するしか方法はないとみられていたからだ。
そうした中で、本体部分だけでも引き上げたことは評価できる。「医師不足解消」を掲げた福田政権の登場で風向きが変わったことや、与党も選挙を意識して引き上げを求めたことが影響した。
だが、この程度では医師不足を緩和できるかどうかは疑問だ。これを受けて、年明けから厚生労働省の中央社会保険医療協議会が個別の診療行為に配分するが、これまで以上のきめ細かいメリハリを求めたい。
まずは病院の勤務医に手厚くしてもらいたい。医師不足は勤務医不足だからだ。勤務医を増やして、当直明けでもそのまま日勤を続けるような過酷な勤務は解消し、きちんとした交代制にしたい。今は医師が一手に引き受けている雑務も軽減させたい。
なによりも疲れ果てて低下している勤務医の意欲を取り戻すことが必要だ。患者にとってはその分、窓口負担も増えることになるが、一方でそれが安心で安全な医療につながるのではないか。
そのためには、開業医への配分を減らすことも避けられない。厚労省の調査では開業医の年収は勤務医の1・8倍ある。疲弊した勤務医が開業に走るのは、やはり条件がいいからだろう。
同じ開業医でも、24時間対応したり、夜間も診療しているところには報酬を増やしたい。そうすれば病院の勤務医の負担軽減にもつながるからだ。明細書付き領収書の義務付けなど患者の視点や、後発医薬品の促進など効率化も欠かせない。
今回の本体部分引き上げには、中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険への国庫負担を大企業の健保組合が肩代わりして、シーリング分を埋めてくれたことが大きい。いわば、大企業のサラリーマンの犠牲で実現できた。
だが、高齢化が進展する中で医療費が増えるのは必然で、必要な医療にはいつまでも資金を惜しむわけにはいかない。社会保障費の枠内だけなく、予算全体の中で考える時がきたと言える。
|