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2009年 9月30日(水)

混合診療控訴審判決

患者の利益と権利優先を

 公的な健康保険で認められていない自由診療を一つでも受けると、併用されている保険診療分まで全額自己負担となる。これが「混合診療原則禁止」である。

 その理不尽さを指摘し、保険診療分について保険の療養費を給付するよう、がん患者が求めた訴訟の控訴審判決が東京高裁であった。

 混合診療原則禁止の合法性が問われたが、東京高裁は高度先進医療などを混合診療禁止の例外とした健康保険法を根拠に「やむを得ず、相当」として、国が敗訴した一審判決を取り消し、原告の請求を棄却した。自由診療に頼らざるを得ない一部のがん患者らには厳しい逆転判決となった。

 現代医療は日進月歩である。特に、がんや難病の治療、診断で技術革新は目覚ましい。10年前に救えなかった患者を治せるようになった病気もある。患者や家族も医学の進歩を待望している。

 しかし、新しい治療法に保険が使えるようになるまでには、数年かかる臨床試験や国の審査を待たなければならない。国の承認は新薬などの効果と安全性を確かめるため必要な手続きだが、欧米で標準的な治療法が日本でずっと承認されないままというケースは多い。

 医薬品の最初の発売国から承認されるまでの平均期間は日本で4年もかかっており、世界で飛び抜けて長い。この承認遅れをドラッグ・ラグと呼ぶ。患者の不利益を考えると、放置できない。

 患者たちは高額な薬代を払って、個人輸入するしかない。また、国が薬などを承認していない病気に使う場合も形式上は自由診療になり、一緒に受けている保険診療まで全額自己負担となる。この多額な負担は、生死の分かれ目に直面する患者にとって酷に過ぎる。

 混合診療の原則禁止は、厚生労働省や日本医師会が長年支持してきた医療政策の基本の一つだ。

 危険な実験的医療が増える、治療費が高額化する、低所得者の人が必要な治療を受けられなくなり、医療の公平性が損なわれる、などの懸念がその理由となってきた。

 治療法の進歩が遅くて、新薬などが速やかに承認されるシステムがあれば、これでもよかった。しかし、現実はまったく異なる。医学が急速に進歩する現代に見合って、新薬などの承認の迅速化、患者を苦しめるドラッグ・ラグの解消も急務である。

 控訴審で国の逆転勝訴となったとはいえ、混合診療原則禁止を維持する理由が正しいかどうかを検証しながら、保険診療で給付する範囲を拡大していく必要がある。人道的観点から、効果と安全性が期待される薬や医療技術の混合診療解禁を着実に進めるよう提案したい。

 がんなどの患者にとって、保険診療で認められた標準治療が効かなくなったらどうするか。命懸けの選択である。

 外国で使われている有効な科学的治療法に、患者が期待するのは当然だろう。混合診療禁止で保険の給付を受ける権利まで一挙に奪う現行制度は人権侵害の疑いがなお残る。

 患者は良質な医療を公平に受ける権利がある。一方、行政は個々の医療に過剰な介入を控える義務がある。

 この原則に立ち返って患者の自己決定権で医療が受けられるよう、混合診療制度を改めるべきである。国が逆転勝訴に安住し、その努力を怠れば患者の不満は増すだろう。

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