【移動編集局】地方創生〜チカラは地から〜 中濃編

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長良川の遡上鮎育て 琵琶湖産脱却へ増産計画

長良川の遡上鮎育て 琵琶湖産脱却へ増産計画
建設が進む鮎を飼育するための水槽=関市戸田、県魚苗センター関事業所

 世界農業遺産に「清流長良川の鮎」が選ばれて間もなく2年。県は、鮎の稚魚を育成する県魚苗センター(美濃市、関市)の施設拡充工事を行っている。拡充により、長良川で生まれ育った天然の「遡上(そじょう)鮎」の増産を目指し、「長良川ブランド」の名にふさわしい鮎を育成する計画だ。

 センターの拡充により新たに育成されるのが、遡上鮎と呼ばれる一度伊勢湾に下り再び長良川に戻ってきた鮎だ。春に長良川河口堰(ぜき)の魚道で捕らえた稚魚2万匹を親として育て、秋に産卵した子ども世代数百万匹を飼育し翌春放流する。放流された鮎の一部が秋に産卵、子どもが伊勢湾に下り再び翌春遡上した際に捕らえ、育てる−というサイクルを繰り返す。桑田知宣県水産振興室長は「子孫をずっと人工的に飼育するのでなく、毎世代自然から調達する方式は全国初では」と語る。

 この方式を選んだ背景には、冷水病に感染しやすい琵琶湖産に依存していた1990年代に漁獲量の激減を招いたことや、琵琶湖産は海から川に遡上しないという欠点があるからだ。海で生存できないためともいわれるが、さらに厄介なことに琵琶湖産と遡上鮎の交配種も遡上しないという。

 県の取り組みは、まず、かつて県内全域で使われていた琵琶湖産依存からの脱却だった。秋に岐阜市付近で捕らえた鮎を産卵させ、稚魚を育成。その稚魚を各漁協が放流した。2005年の郡上漁協を皮切りに、長良川本川の3漁協がこの方式に切り替えた結果、鮎の遡上数は増加傾向になった。郡上漁協では出荷量は、10年前の約4倍に増えたという。

 だがこの方式は、気象の影響を受けやすく、まだ琵琶湖産が混入する可能性もある。次の手として河口堰での遡上鮎の稚魚採取に進んだ。遡上した鮎には琵琶湖産はほぼいないからだ。冷水病の影響を排除できるうえ、一代限りの琵琶湖産と違い、幾世代にわたる安定的な漁業資源確保につながる。同漁協も「出荷増が加速するのでは」と期待する。

 拡充工事中の同センターは来年4月に開所する。桑田室長は「遡上鮎への切り替えは、人の手も加えつつ天然資源を守るという里川の理念につながる。里川の鮎こそが長良川ブランド」と力を込める。

=おわり=

【世界農業遺産・清流長良川の鮎】 世界農業遺産は、伝統農法や生物多様性を伝承し、持続的な活用を図るため、国連食糧農業機関(FAO)が創設した。「清流」は長良川上中流域が対象で、河川を通じた住民生活や漁業資源、河川景観、食文化などの密接な関わりを循環システム「長良川システム」として捉えているのが特徴。鮎を清流が育む生物や文化などの象徴と位置づけている。

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