【移動編集局】地方創生〜チカラは地から〜 飛騨編

ルポ飛騨

観光に新たな風 インバウンド/聖地巡礼

観光に新たな風 インバウンド/聖地巡礼
旅館での食事を楽しむ外国人観光客=岐阜県高山市相生町、旅館田邊

◆「君の名は。」効果、今も/和食に「ビューティフル」

 高山市は昨年の外国人宿泊者数が約42万人を超えて過去最多となった。飛騨市も大ヒットアニメ映画「君の名は。」の“聖地”として脚光を浴び、いまなお多くのファンが訪れている。海外からの旅行者を誘致するインバウンドと、アニメツーリズムという新たな観光スタイルの現場を歩いた。

【インバウンド】

 1934年創業の旅館田邊(高山市相生町)。大勢の観光客でにぎわう市中心部の観光地「古い町並み」の近くにある。べんがら色の落ち着いたたたずまいの建物に入ると、飛騨の家具をしつらえた待合が目を引く。「外国人観光客の存在は大変ありがたい」と田邊信義社長(81)。老舗旅館だが、最近は外国人が宿泊者全体の約8割を占めるという。

 イタリアのミラノからハネムーンに訪れたエンジニアのアレサンドロ・フローリスさん(29)夫妻。自然な日本文化を感じたいと、今月23日、飛騨高山を訪れた。

 午後6時ごろ、和室での部屋食を体験。飛騨牛料理が運ばれてくると「ビューティフル!」と声をそろえ、正座のスタイルで日本食を味わった。「文化や習慣に触れたいのでホテルではなく、宿泊先に旅館を選んだ」とアレサンドロさん。古い町並みを散策し、景観の美しさに感動した。

 高山陣屋前広場(同市八軒町)で開かれている朝市。平日朝9時ごろ、続々と外国人が姿を見せる。店頭には「little sweet(ほんのり甘い)」などと書かれた値札が掛かり、味の特徴が伝わるように工夫されている。英語や中国語で書いた朴葉みそを使った料理のレシピを手渡す店も。外国人をもてなす風景があちこちにあった。

 ただ、「平日は外国人観光客ばかり。日本人はほとんど見かけない」と、自家製のみそや漬物を売る井ノ口洋子さん(64)はつぶやいた。

【聖地巡礼】

 今月中旬の日曜日。飛騨市古川町のJR飛騨古川駅と気多若宮神社に出掛けた。いずれもアニメ映画「君の名は。」にちなんだ代表的な「聖地巡礼」のスポット。駅の渡線橋から停車中の列車をのぞき見たり、神社の階段をバックにスマートフォンで撮影したりしている観光客がいた。

 中学生の娘と友人3人で訪れた富山市のパート中谷麻記さん(49)は「飛騨古川に来たのは初めて。映画は昨年9月に見たが、とても面白く感動した。桜見物がてら聖地巡礼してみようと思った」と話した。

 映画に登場する組みひもの体験ができ、ファンの交流の場にもなっている飛騨古川さくら物産館(飛騨市古川町三之町)は、親子連れや外国人観光客らでにぎわっていた。

 スタッフから組みひも作りの指導を受けていた東京都の会社員川崎晴美さん(50)は「映画は見たことがないが、古川駅の案内で聖地巡礼のことを知った。東京に戻ったら、ぜひ見に行きたい」と笑顔を見せた。

 飛騨市によると、映画が公開された昨年8月下旬から今年3月までの聖地巡礼者は約6万3千人。今年に入っても人気は衰えを見せない。市観光課は「アニメツーリズムを突破口に、飛騨市のファンを増やしていきたい」と意気込む。

【記者のひとこと】

 高山市は、他地域に先駆けてのインバウンド戦略が功を奏し、かつてないにぎわいを見せている。飛騨市でも「君の名は。」の大ヒットで国内外から多くのファンが訪れるなど追い風が吹いている。ただ万が一、大災害のようなとてつもない逆風に見舞われた時の影響が心配だ。観光面ではこの傾向が特に強く、リスク分散のためにも国内外の幅広い層から支持される観光地を目指してほしい。

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