【移動編集局】地方創生〜チカラは地から〜 飛騨編

ルポ飛騨

集落で育む郷土愛 下呂市・三ツ石、Uターン次々

集落で育む郷土愛 下呂市・三ツ石、Uターン次々
地元の子どもたち。集まると笑顔が絶えない=21日、岐阜県下呂市乗政

◆“子は宝”強い団結力

 今月上旬の日曜日。下呂市の山あいの集落に、子どもたちの元気な声が響き渡った。恒例の祭りで、菓子をまく「せんごまき」。われ先にと菓子に手を伸ばし争奪戦の様相だ。周囲で大人たちが、その様子を遠巻きに見守っていた。

 乗政地域にある三ツ石集落は戸数37戸、171人。このうち中学生以下が約5分の1を占める。生活するには決して便利な地とはいえそうにないが、全国の同じような農村が抱える少子化という課題とは無縁だ。

集落で育む郷土愛 下呂市・三ツ石、Uターン次々
三ツ石にUターンした熊倉和宏さん。妻の由紀恵さんと4人の子どもを育てる=17日、下呂市乗政、熊倉さん宅

 地元の森林組合で働く熊倉和宏さん(40)は、10年ほど前に故郷に戻ったUターン組。揖斐郡大野町出身の由紀恵さん(40)との結婚を機に、29歳で名古屋市から帰ってきた。生後7カ月から11歳まで4人の子どもと、夫婦、両親、祖母の4世代9人の大家族だ。

 結婚前からUターンを決めていた。「自然と帰りたくなった。小さいころの子供会の楽しい思い出が多いからかな」と振り返る。幼少期、大人たちが作ってくれた「思い出」が、その大きな要因になったと明かす。

集落で育む郷土愛 下呂市・三ツ石、Uターン次々

 三ツ石集落には昔から続く地域の行事が多い。祭りをはじめ、海水浴、餅つき…。どの行事にも多くの住民が集まり、結束の固さがうかがえる。

 熊倉さんのようなUターン組は現在、5世帯ある。家族に子どもが多いのもこの集落の特徴だ。高校生以下の子が3人以上いる家庭は9世帯。路地を歩いていると、あちらこちらの家からにぎやかな声が聞こえてきた。

 子どもが多いのはなぜだろうか。その理由が知りたくて、住民に聞き取りを進めると▽同居する祖父母から受けるサポート▽子育てに最適な自然環境―という答えが見えてきた。加えて、集落全体に“子どもは宝”と守り、育もうとする雰囲気が伝わってくる。

 時代とともに農地や道路、上下水道が整備され、生活環境が改善したことで暮らしやすくなった側面はある。だがそれ以上に、若い住民がこの地にとどまる理由があると語るのは地元の今井政良市議(63)。「各家庭で祖父母が孫に『家を守っていってくれ』と言ってきたことが大きい」と強調する。

 県内のある自治体が2015年に高校生を対象に行ったアンケート調査で、「親から、今住んでいる地域に住み続けることを勧められたことがあるか」との問いに「ない」との回答が約7割を占めた。

 大人たちが故郷を愛し、子どもに伝えていくことが地域の未来を決めるのかもしれない。

【記者のひとこと】

 「郷土愛」だけでは各家庭に子どもが多い理由にはならない。経済面から、子どもは1人か2人が一般的という時代。熊倉和宏さんも「子どもが高校生になったら、お金がかかることに不安もある」と打ち明ける。そこで鍵を握るのが団結力。三ツ石の集落内には親戚関係も多く、使い古した服を譲り合ったり、足りない物を借りたりすることは日常的。一昔前と同じように、地域全体で子どもを育てる土壌がある。団結力は、子育ての強い味方だ。

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