【移動編集局】地方創生〜チカラは地から〜 飛騨編

飛騨を拓く

訪日客増、雇用に反映を 美ら地球社長 山田拓さん

>訪日客増、雇用に反映を 美ら地球社長 山田拓さん
着地型観光に取り組んできた立場から、「訪日客の増加を地元の雇用につなげる必要がある」と語る山田拓さん=飛騨市古川町弐之町、美ら地球

◆客単価上げ給与や設備投資へ

 インバウンド(訪日客)が好調な飛騨地域にあって、あえて警鐘を鳴らすのは、観光業「美(ちゅ)ら地球(ぼし)」(飛騨市古川町弐之町)の社長山田拓さん。「クールな田舎をプロデュース」を旗印に、地元ならではのイベントやプログラムを行う着地型観光に先駆けて取り組んできた立場から、「旅行客の増加が、地元の雇用につながっていない。地域が消費されている」と危機感を抱く。

 古川町の中心部、城下町の面影を残す一角にある事務所。美ら地球が運営するガイドツアー「サトヤマエクスペリエンス」の拠点だ。今年7年目を迎えた「飛騨里山サイクリング」に参加する外国人観光客が、スポーツ自転車に乗って次々に町へと繰り出していく。

 「ツアーのターゲットは、地域をじっくりと楽しむ旅行文化が根付く欧米豪の個人客に絞ってきた」と山田さん。自国にコメの文化がない人たちには、飛騨では普通の田園風景も興味深く映る。コメがどう栽培され、日本酒やすしに利用されるのか−。参加者は自転車をこいで景色を楽しみながら、ガイドの語りを通して日本や飛騨の暮らしに触れる。

 地域活性化の次の一手として注目を集める着地型観光だが、「事業者は入り込みの大半を占める国内旅行者に焦点を当てるため、日本人基準の手頃な価格にならざるをえず、稼げないことが多い」と指摘する。

 一方で、美ら地球は当初から訪日客に主軸を置き、自転車ツアーは3時間で1人7600円と高価格帯に設定。グループによる貸し切りの場合は数万円にもなるが、旅行口コミサイトには利用者の高評価がずらりと並ぶ。

 山田さんは客単価の低さが、観光産業の人手不足の一因でもあるとし、「現状では地域に資する形になっていない。せっかく今、海外から高級志向の人たちが訪れている。単価を上げた分で、社員の給与を上げ、適切な設備投資ができる。魅力的な職場にしないと人を採ることができない」と力を込める。

 国に対しても「海外プロモーションに大きく予算を割いているが、まずは受け入れ体制を整備し、地域に仕事を生み出さないと持続しない」と注文する。

 手腕を買われ、国内外で講演やコンサルティングを依頼されることも増えたが、ホームグラウンドは常に飛騨。「今が踏ん張り時。飛騨を“クール”にしたい」。「よそ者」の視点を武器に、飛騨の未来を切り開いていく。

 奈良県出身。外資系コンサルティング会社で勤務後、世界を放浪。2007年、飛騨市古川町に「美ら地球(ちゅらぼし)」を設立した。外国人個人旅行者向けの観光ツアーを企画運営し、全国各地で観光コンサルティング業務を行う。13年に地域づくり総務大臣表彰。総務省地域力創造アドバイザーも務める。42歳。

=おわり=

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