 |
山から切り出した間伐材を軽トラックで「木の駅」へ運び込む山主ら=恵那市中野方地区
|
森林の多面的機能を損ない、大規模災害にもつながりかねない人工林荒廃問題への有効策を見いだそうと昨年末、恵那市中野方地区で取り組まれた社会実験が予想を上回る成果を生んだ。実験で検証した「木の駅」システムは山主の間伐意欲に焦点を当て、約2週間で世帯数わずか500余の同地区から軽トラック150杯分もの間伐材を集めた。特別な技術や用具を必要とせず、小規模地域でも導入できることから、全国的に通用するとの評価を得る。来月7日に報告会を開き、本格運用や普及の道を探る。
森林整備が進まない最大の要因は間伐材の搬出にかかるコスト負担。大きな木材を運び出すには専用の機材と技術が必要で、林業を本職としない山主には難しい。本来間伐すべき低価格の木材(通称C材)では採算に合わず、切ってもそのまま山に放置されることが少なくない。
木の駅システムは間伐材の搬出に金銭的メリットを与えることで、副業的にC材を切り出し、収集所「木の駅」へ運び込んでもらうことを目的とする。恵那市のNPO法人夕立山森林塾などが高知県仁淀川町の先行例を参考に構築し、昨年12月5日から16日間の社会実験を行った。
ポイントは2点。まず納入木材1トンにつき、チップ用材としての引き取り価格3千円に同NPOが3千円を上乗せした計6千円を支払うこと。利益は少額だが、副業としてなら山仕事に向かう意欲につながる。山主の農林業池戸善男さん(73)も「くず木を山に残しておくのは景観も悪く、気になってはいたが、金がかかって手がつけられなかった。(木の駅なら)小遣い稼ぎに動こうという気になる」と喜ぶ。
もう1点は、木材の長さが50センチ以上あれば受け入れること。搬出前に扱いやすい長さに切断できるため、技術に乏しい山主でもチェーンソーと軽トラックで手軽に切り出せる。
社会実験では30トンの納入を目指したが、結果は52トンを集めた。同NPOの丹羽健司副代表(56)は「余暇に山仕事をして小遣いが得られ、地域のためにもなると喜んでやってもらえた」と話す。対価は地区内の登録店舗でのみ使用できる地域通貨で支払われた。地域経済の活性化にもつながるため、広く理解を得られやすい。
普及への鍵は対価を上乗せする財源。社会実験では林野庁などの助成を受けた同NPOが負担したが、丹羽副代表は「人工林の多くは早急に間伐しないと危険な状態。災害や地球温暖化防止の効果も考え、立ち上げには行政の協力がほしい。木材のエネルギー利用などを組み合わせれば、自立の可能性も十分ある」と話す。
県森林文化アカデミーの原島幹典教授(52)は「山主、商店、地域、行政と多くの立場でメリットを感じられるシステム。関係者の信頼づくりが欠かせないが、特別な要件はなく、全国的に通用する」と将来性を評価する。森林荒廃問題への有効な一手として期待が高まる。
(西山歩)
|