写真:難病患者、歓迎と不安

混合型血管奇形の難病指定を求める署名を厚労省担当者に手渡す飯尾良英代表(左から2人目)と患者、家族ら=7日、厚労省

新薬開発推進に熱視線
「改正で助成外れるかも」

 国の難病対策が大きく変わろうとしている。国は総合的、安定的な難病対策として新制度をつくり、2014年度からの施行を目指す。抜本的な制度改革は約40年ぶりだ。改革により、医療費助成の対象疾患を現在の56から300超まで拡大することも検討されている。また国は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った新薬開発も進めている。加速する動きを県内の患者団体は注意深く見つめている。

 大学生の長女(20)が進行性骨化性線維異形成症(FOP)と闘う橋幸雄さん(57)=岐阜市=は「夢にも思わなかった」と国の動きを歓迎する。

 FOPは筋肉が骨に変わっていく病気。患者数は全国で約60人。治療法は見つかっていない。だが、iPS細胞を使った新薬の開発研究が始まった。もし薬ができれば病気の進行を抑え、治療法が見つかるかもしれない。

 橋さんは全国のFOP患者会の副代表を務めている。かつて製薬会社の社長に薬を開発してほしいと手紙を書いたことがあったが「商売にならないから、と駄目だった」。国が予算を付ければ対策が進む。「大きな光だ」。期待は膨らむ。

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 負担増を懸念する患者団体もある。全国パーキンソン病友の会の長谷川更正副理事長(77)=美濃加茂市=は「従来の助成を下回ることがないよう、国には強く要望している」と話す。

 体が震えるなどの運動障害が現れるパーキンソン病は、医療費助成の対象56疾患の一つ。だが、助成対象から外されたり、軽症患者は切り捨てられたりするのではと、友の会は懸念を抱えている。

 患者数が全国で約15万人、県内では約1800人と他の難病と比べて多いためだ。実際、2006年には助成対象縮小の動きが出た。友の会で反対運動を展開、撤回させた。

 今回の改正でも助成対象の見直しや所得に応じた自己負担が検討されている。診療代、薬代は1人月額10万〜15万円。長谷川さんは「助成対象から外れたら生活できない人もいる」と話す。

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 混合型血管奇形の難病指定を求める会は7日、厚労省に20万1706人分の署名を提出した。4回目の署名提出で、署名数は合わせて124万6089人分となった。

 混合型血管奇形は血管やリンパ管が先天的に形成不全の病気。同会は07年、岐阜県で結成された。当時加茂郡八百津町に住んでいた病気の女児の家族や関係者が立ち上げ、全国17支部にまで広がった。保育園児だった女児は11歳になり、今は岐阜市に住む。治療には専門医がいる北海道まで通う。病気の研究に国の予算も付いたが、難病指定には至っていない。

 同会関係者は、署名提出は今回が最後になるかもしれない、と考えている。今回の制度改正で難病の枠が広がるとしたら、このタイミングがラストチャンスになるかもしれないからだ。会の代表を務める飯尾良英中部学院大教授は「大きな節目を迎えている」と話す。

(馬田泰州)

【国の難病対策改革】 厚労省の難病対策委員会が今年1月にまとめた提言では、難病対策の見直しのポイントとして公平性、制度安定性の確保などを求めている。また、都道府県の新たな「難病指定医(仮称)」指定や、高い専門性を持つ「新・難病医療拠点病院(仮称)」の整備を提言、患者の就労支援も強化する。現在、国が指定している難病は130疾患。うち56疾患が医療費助成の対象。4月には安倍晋三首相が「国家プロジェクトとして難病対策を一気に加速させていきたい」と表明。参院選後に本格的な議論が進むとみられている。