岐阜市の老舗「さかえや」7月末閉店 − 岐阜新聞 Web
岐阜市の老舗「さかえや」7月末閉店
2017年07月01日08:54
写真:岐阜市の老舗「さかえや」7月末閉店
店頭で笑顔を見せる鹿野勝也社長(中央)と妻のとみ子さん(右)、義妹の田鶴子さん=岐阜市真砂町、さかえや

◆素朴な赤飯愛され1世紀

 1920年に創業し、97年間にわたって餅や赤飯、和菓子の製造販売を手掛けてきた岐阜市真砂町の老舗「さかえや」が、7月末で閉店する。赤飯は昔ながらの製法にこだわった素朴な味が人気だったが、体力のいる仕事。3代目の鹿野勝也社長(75)が「元気なうちに店をたたみ、得意先などを同業者に引き継ぎたい」と決断した。長く守り続けた味を惜しむ声が、続々と寄せられている。

 鹿野社長の祖父が同市池ノ上町で創業、現在地に移って母が2代目を務め、鹿野社長は62年に引き継いだ。以来55年。妻とみ子さん(72)、弟の和彦さん(71)、和彦さんの妻田鶴子さん(65)と4人が中心になって店を切り盛りしてきた。

 先代から続く味を守ってきたことが誇りだ。赤飯は今も、ヒノキのせいろと竹のすのこを使って作る。「味を守ることは母の教えでもあった。味はお客さんの喜びにつながるので妥協はしなかった」。結婚式の引き出物に赤飯が定番だった時代は、一日に2千セットを出荷したこともあったという。

 もち米は、高山市丹生川町産の特選米。84年、素材の味を生かした控えめな甘さが特徴の「赤飯まんじゅう」を発売すると、店の看板商品になった。

 しかし、手作りにこだわった製法は力仕事を伴い、体への負担は大きい。「体力が追い付かなくなり、味を守れなくなる恐れがあった」。約1カ月間、眠れない日もあるほど迷った末に閉店を決断した。息子は2人いるが、「自分の道を歩んでいるから」と自分の代で幕を引くことにした。

 「悔いがないと言うとうそになるが、味を守り切ったという充実感もある」。6月上旬に得意先に閉店を知らせ、引き継ぎ先の紹介に奔走している。

 閉店を知った顧客らから惜しむ手紙やファクスが10通ほど寄せられた。中には昔を懐かしみ、涙する常連客もいた。「苦労はあったけど、お客さんや家族に支えられた幸せな仕事人生だった。感謝したい」と表情を緩める。

 閉店は今月30日。21日から閉店日まで連日、特売を行う。


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