リアルに近づけたい 漫画「聲の形」大今良時さん − 岐阜新聞 Web
リアルに近づけたい 漫画「聲の形」大今良時さん
2017年09月20日09:23
写真:リアルに近づけたい 漫画「聲の形」大今良時さん
「唯一できたことが絵を描くことだった」と振り返る漫画家大今良時さん=東京都内

 漫画「聲(こえ)の形」で数々の賞に輝いた漫画家大今良時さん(28)=大垣市出身=。聴覚障害への差別やいじめを生々しく描きながら、少年少女の心の動きを丁寧に追った。繊細な題材に挑んだ思い、漫画家としての原点について尋ねた。

 −ふるさとをモデルに描いた理由は。

 「大垣という街にではなく、自分の中に理由がありました。作品を描いたころ、東京で漫画家になることを決めていたので、今のうちに近くにある風景を描いておきたいと思ったんです。よりリアルに近づけたい漫画だったので、想像ではなく実際に小学校で写真を撮らせてもらったりもしました」

 −漫画家になる決意はいつ。

 「決めた瞬間、というのはありません。昔から絵を描くことが好きで、近くに漫画があったので漫画を描いていて、自然と漫画家になりたいと思ったんです。他に得意なこともなかったですし。民踊を習っていたけど学校外の活動だから、クラスの中でアイデンティティーとして発揮されず、唯一できたのが絵を描くことでした」

 −着想は実体験から得たのか。

 「学校生活で感じていたことを、想像を交えて描きました。例えば、自分は先生になったことはないけど、あの時に先生はああいう指導をしたなって思い出しながら、なぜそうしたのかという部分を想像して描いたんです。(主人公の)石田に対して、自分があの先生だったらこう言うかなっていう考え方です」

 −母親が手話通訳者。家族の支えもあったか。

 「小さいころから、聴覚障害のある人と接する母を見ていました。でも人見知りなので、自分からしゃべったりはできなくて。手話を描いたのも、東京に行ったら母に会えなくなるから、今のうちに聞けること、生かせることを描こうと考えたんです」

 −ふるさとはどんな存在か。

 「(大垣市には)癒やしを求めて帰っています。旅に出る感覚に近いですね。いい思い出ばかりじゃないけど、一人になりたい時とか、懐かしい人に会いたい時、大垣の街を歩きたい気持ちになります。空気に触れたい感じ。でも上京してから、ゆっくり大垣を味わえてないなあ」

 −連載中の「不滅のあなたへ」について。

 「手放したくないものを手放し、得たくないものを得る。周りの環境によって自分が変化し、翻弄(ほんろう)されていく中で、本当に獲得したいもの、とどめておきたいものを得て、自らを形作っていくお話です。夢に向けて頑張っている人に届けたいですね」

 おおいま・よしとき 大垣市生まれ。2008年、講談社の第80回週刊少年マガジン新人漫画賞で入選。09年デビュー。13年から「聲の形」を連載。15年、手塚治虫文化賞新生賞。16年から「不滅のあなたへ」を連載中。