ソフト・大垣ミナモ エース山田選手引退 − 岐阜新聞 Web
ソフト・大垣ミナモ エース山田選手引退
2017年12月09日08:17
写真:ソフト・大垣ミナモ エース山田選手引退
今季限りで引退する大垣ミナモソフトボールクラブの山田麻未投手=3日、岐阜市柳津町流通センター、流通センター公園

◆1部昇格 地元の応援に「責任果たせた」

 女子日本リーグ参入5年目で念願の1部昇格を果たした大垣ミナモソフトボールクラブ(岐阜県大垣市)。来季からの最高峰の舞台にナインが思いをはせる中、リーグ参入時から支え続けたエースがユニフォームを脱ぐ。誰よりも昇格に熱い思いを抱いてきた山田麻未投手(30)。実は2年ほど前から引退を考えていたが、同市挙げての支援に報いたいとの強い思いでマウンドに立ち続けてきた。「他のチームで経験できないことをたくさんさせてもらった」と大願を成就しての引退に悔いはない。

 喜び、安堵(あんど)、達成感…。1部昇格を決めた10月24日の優勝決定戦を終え、さまざまな思いが心を駆け巡る中、一つだけ湧いてこない思いがあった。来季への意欲だ。「1部で投げている姿をイメージできなかった」

 福岡県出身で中学からソフトボールを始め、強豪の神戸親和女大(兵庫)卒業後、1部のデンソー(愛知)に入団した。だが「やれると思っていた」と意気揚々に臨んだ日本最高峰の舞台は甘くなかった。好投手がそろい、練習試合で好投するも、数少ない公式戦の登板で結果が残せない。「チャンスを生かさなきゃと焦り、思うようにならなかった。ソフトボールが楽しくないとまで思うようになった」と振り返る。所属した3年間、リーグ戦の先発機会は一度もなく、自信も喪失していた。

 「クビかも知れない」との考えが頭をもたげる中、声を掛けてくれたのが2012年のぎふ清流国体後にリーグ参入を決めた大垣ミナモだった。「まだやれる。投げられるのならどこでもいい」と入団を即決。「必ず1部に上がって、古巣(デンソー)と戦う」と心に誓った。

 13年の入団後は大車輪の働き。エースとしてマウンドに立ち、リーグ参入2年目には、昇格を決める優勝決定戦にも進出した。だが、ここから「1部の壁」が毎年のように立ちはだかる。「今年こそはいける」と臨んでも、あと一歩のところで昇格を逃し続けた。

 山田投手を奮い立たせ続けたのは支援企業や地域住民の存在だった。練習に見学に訪れ声を掛けてくれる人たち、地元大会になれば人であふれるスタンド。「昇格を逃しても、来年も頑張ってと温かく声を掛けてくれた。その期待を裏切りたくなかった」。「自分のため」に投げていたエースは、いつしか「人のため」にプレーするようになっていた。

 引退は誰にも相談せずに決めた。突然のことにチームメートは驚き、後輩投手からは「何でですか」「辞めないでください」などと無料通信アプリ「LINE」で引退を引き留めるメッセージが届いたという。

 ただ、周囲の受け止めとは対照的に、本人は冷静だ。「(大垣ミナモを)1部へ昇格させることが、自分の目標になっていたことに気付いた。それがかなえられた。途中で諦めなくて良かった。責任は果たせたかな」と。屈託のないその表情には、ソフトボールをやり切った充実感があふれていた。