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新刊レビュー/2017年11月10日 11:42
『鍛錬の流儀』山本圭一著 ビシッと生きるための71条
 

 私は本書を批判しなくてはならない。なぜなら「鍛錬家」を名乗る著者は混迷する世界を強く賢く生きるため肉体と精神を鍛えており、「欠点、弱点を辛辣に指摘してくれる人こそ真に優しい人」「耳の痛い話こそ成長の糧とするべき」と明言しているからだ。

 1979年生まれ。人前で極度に緊張する子どもだったため「強くなりたい」と空手を始め、筋トレの道を極めるべく自衛隊に入隊。フィットネス業界に転身して名を成したが、東日本大震災を機に宮城県に移住し、漁師として日々心身を鍛えている。

 著者流の「鍛錬の流儀」が71条記されている。「鍛錬とは『自分』ではなく、『他人』のためを想うことだ」「リスクを恐れるな。むしろノーリスクを恐れろ」「他者から認められたいという鍛錬は愚の骨頂である」……どれも大変立派な教えだ。

 だがあえて批判しよう。「流儀18」に「鍛錬をひけらかすな。鍛錬をしていることは極力伏せておくべきだ」とあるが、著者は本書で自分がいかに過酷な労働と修行をしているかを写真入りで全面開示している。「流儀71」には「黙って厳しい道を独りで歩め」とあるが、著者の語り口は終始冗舌だ。「流儀28」に「困っている人を見て見ぬふりをしてしまうなど、いわば心に嘘をつくのは一日に三回まではよいだろう」とある。困っている人を3人も見過ごしていいのか!

 ビシッと批判したら、自分も何かビシッと生きているような気がしてきた。本書にはこういう効用もあったのだ。

(柏書房 1600円+税)=片岡義博