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新刊レビュー/2017年11月10日 11:52
『日本論』石川九楊著 書字から見た「斜めの文化」
 

 『菊と刀』や『「甘え」の構造』などこれまであまたの日本文化論が提唱されてきたが、ここにもう一つユニークな新説が加わった。日本語、しかも書字から日本文化の特質を解明するという、書家ならではの着想だ。

 日本文化を形づくる日本語は「漢字語、ひらがな語、これに加えてカタカナ語が交じり合った結果、成立した混合言語」という視点が考察の出発点となる。

 漢詩・漢文に象徴される漢字語は政治・宗教・思想などの表現を担い、和歌・和文と共にあるひらがな語は四季・性愛・恋愛の世界を表す。

 書字から見ると、漢字は左右対称・等間隔という普遍的な美学の上に成立しているが、ひらがなは非対称で流れるようにつながっていく。

 こうした「重さの違う言葉」が併存し、均等・均衡を保とうとする一方で、それを崩す力が不断に働く独自の構造が日本文化を特徴づけている。それを視覚的に示したものが、行頭を上げ下げしてつづる和歌の分かち書きや屏風絵に見られる「斜めの構図」だという。

 著者はこの日本語の二重性こそが、「表と裏」「本音と建前」など従来の日本論がさまざまに指摘してきた日本文化の二面性の根底をなしていると喝破する。

 日本論に真偽はない。問われるのは説得力と独創性、そして深さと広がりを示す普遍性だ。その意味で本書は類例のない一書。惜しむらくは、「恥の文化」「タテ社会」といったキャッチフレーズがない。ここで「斜めの文化」「二重言語論」を提案したい。

(講談社選書メチエ 1500円+税)=片岡義博