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新刊レビュー/2017年12月15日 11:57
『窓から見える最初のもの』村木美涼著 新人賞選評VS自分の感想
 

 第七回アガサ・クリスティー賞の大賞受賞作である。このアガサ・クリティー賞は公募型の新人賞。

 本筋からは逸れるが、新人賞の受賞作の巻末には賞の選考委員による選評が付けられていることが多い。本書にも作家の藤田宜永氏、書評家の北上次郎氏など4名の選評が掲載されている。私はこれを本編よりも先に読むのがけっこう好きだ。選考委員たちが受賞作に与える言葉は必ずしも称賛ばかりではなく、欠点や改善すべきポイント、受賞者に残されている課題にもある程度率直に触れられる。つまりこれから自分が読もうとしている作品の瑕疵とみなされている部分も認識した上で、果たして自分も同じように感じるのか? と物語に向かうのが面白いのだ。

 今回の4氏の選評を総合すると、構成や細部の描写には評価すべきところがあるものの、結末の描き方にはやや物足りなさが残るということになっている。果たして本当にそうなのだろうか。

 本書では4人の視点人物がそれぞれの日常と心情を語っていくことで物語が展開していく。

 気が塞ぐ日々が続き、心療内科に通いだした女子大生は、そこで出会った男に惹かれる。しかし病院関係者の誰もがそんな男は存在しないと言う。

 夭逝して伝説的存在となった画家に魅せられた壁紙会社の社長は、幻の作品が存在することを知る。その絵に描かれた女性には「腕が六本」あるらしいのだ。

 不動産会社で商業物件を扱う女は、喫茶店を始めたいという客に対してベストとも言える好物件を紹介。だが客はかつて喫茶店を営んでいたという父親の話を持ち出してきて、なかなか契約に踏み切ろうとしない。

 運転免許の更新で警察署を訪れた男は信じられない話を聞く。妻と娘と平穏に暮らしている自分が、見ず知らずの女性から「行方不明者届」を出されているという。

 さて、それぞれに謎を孕んだ4人の人生は、どのように交錯していくのか? となるわけだが、これが読んでいるこちらがハラハラするほどなかなか交錯しない。登場人物たちの日常と心情が丹念に描写されているので、興味はそそられるし読み応えもあるのだが、先が見えない不安はスリルであり、ストレスでもあった。

 結末のとある人物の告白によって謎はきれいに解かれる。しかし、その時の解放感や充足感に比べると、そこまでのストレスの方がやや大きかったという感じは否めない。

 ということで結果としては選考委員の方々と概して同じような感想ということになり、なんだか「引き分け」のような気分だった。

 それでも確かにこの新しい作家に、以後たくさんの作品を生み出すことが期待され、新人賞が与えられたということには大いに納得もする。個人的には、冷涼とでも呼ぶべき登場人物たちへの眼差しの在り方に、この作家ならではの美意識を感じた。

 以上、ちょっと偉そうな物言いになっているのは自覚しつつ、こういう読み方もたまには許されるのではいかと思う。

(早川書房刊 1600円+税)=日野淳