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おすすめシネマ/2018年02月20日 08:03
『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』 集団心理や女性の本性を浮き彫りにした“怖い”映画
(C)2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
 

 昨年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞したソフィア・コッポラの新作だ。1971年のイーストウッド主演×ドン・シーゲル監督作『白い肌の異常な夜』と同じトーマス・カリナンのスリラー小説が原作で、内容的にもほぼそっくり。にもかかわらず、彼女らしい“ガールズ・ムービー”に仕上がっている。時代は南北戦争末期。南部にある世間から隔絶された女子寄宿学校に暮らす7人が、負傷した北軍の兵士をかくまったことで、“女の園”の秩序に亀裂が生じ…。

 『マリー・アントワネット』では悲劇の王妃の伝記を、どこか制御を外れたみずみずしいガールズ・ムービーに仕立ててみせたソフィア。だが本作の演者たちは、あくまでも彼女の手のひらの上で決められた振り付け通りに踊っているように見える。それでもガールズ・ムービー感が漂うのは、キャスティングによるもの。一見ミスキャストのようだが、『白い肌〜』で南部らしさの象徴だった黒人メイドが登場しないことからも、計算づくは明白だ。

 つまりノーブルな金髪女優ばかりを集めたことで、個々の個性が埋没した代わりに、集団としての無垢な女の園という世界観は、圧倒的な強度に達している。“キャラクター<世界観”というソフィアの価値観は、映画としては正しいものだし、何より、それによって集団心理や女性の本性のようなものが見事に浮き彫りになっている。ある意味、『白い肌〜』以上に怖い映画だ。★★★★☆(外山真也)

監督:ソフィア・コッポラ

出演:ニコール・キッドマン、エル・ファニング、キルスティン・ダンスト、コリン・ファレル

2月23日(金)から全国公開