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おすすめシネマ/2017年06月20日 10:44
『いつまた、君と 〜何日君再来〜』 向井理の祖母の半生つづる感動作
(C)2017「いつまた、君と 〜何日君再来〜」製作委員会
 

 原作は、俳優・向井理の祖母が半生をつづった手記で、卒寿(90歳)の祝いに家族・親戚で自費出版して贈ったもの。本作を企画した向井も自身の祖父役で出演している。戦中戦後の困難な時代を、中国大陸や日本各地を転々としながら懸命に生きた夫婦、そして家族の実話だ。

 監督は、『半分の月がのぼる空』『くじけないで』など作家性と職人技を兼ね備えた深川栄洋。回想録を映画化するに当たり、恐らく彼はこう考えたのではないか。回想シーンやフラッシュバックは、往々にして映画をぶち壊す。でも、そこに挑戦しないと逃げることになる。あえて“回想”の持つ通俗性に立ち向かおう!と。

 だからこそ、安易に思えるほどフラッシュバックが多用され、クローズアップが編集の軸になっている。その代わり、感情の高まりに合わせてカメラが被写体に近づくことは決してないし、セリフに頼らず人物の背中に語らせるなど、その演出はセンチメンタリズムとハードボイルドのあわいを常に模索しているかのよう。

 同時に、中国大陸の風景を捉えた映像はまるで西部劇で、四季を折り込んだ絵画のように端正な構図の数々は、たとえどんなに過酷で辛い経験だったとしてもヒロインの記憶には美しい心象風景となって残っているという、監督のメッセージとも取れる。これ見よがしではない、品のいい感動作だ。★★★★★

監督:深川栄洋

原作:芦村朋子

出演:尾野真千子、向井理

6月24日(土)から全国公開