エンタメTop
新刊レビュー
おすすめシネマ
音楽玉手箱
 
エンタメ・フロントライン/2017年01月12日 14:39
絶滅危惧種を救うか、ロマンポルノ 間宮夕貴の君臨と躍動は必見
映画『風に濡れた女』の間宮夕貴(撮影=宮崎晃)
 

▼日本映画界は現在、自主制作を除くと、作り手がオリジナル脚本で撮れる機会は少ない。<実力と志あふれる監督や脚本家><独創性を重視し、製作費を集められるプロデューサー><オリジナルの映画に製作費を出す人><事前の作品知名度を気にせず、定型的ではない映画を欲する観客>、それぞれが増えていかない限り、独創的な映画は絶滅危惧種のままだ。

▼28年ぶりに復活した成人映画レーベル『日活ロマンポルノ』は、完全オリジナル脚本を前提としている。既に一線で活躍する監督による新作5本が、全国順次公開中だ。「ポルノ」という言葉に抵抗がある方も多いとは思うが、昔と立ち位置は変わった。作家性あふれる映画として楽しめて、劇場に女性客が多数来ている。気軽に、できれば5作を見比べてみることをお勧めしたい。

 5監督それぞれのインタビュー取材から、言葉の一端を紹介する。

▼『ジムノペディに乱れる』の行定勲監督(『世界の中心で、愛を叫ぶ』『ピンクとグレー』)。「日本映画は超低予算と大作に二極化しちゃった。昔はその中間、アートと娯楽の両方に耐える映画が真骨頂で、世界を魅了したし、監督が10人いたら10本とも違った。でも今回(ロマンポルノで)それは実証されたと思う。同じ条件で監督5人、全然違う映画が出来上がった」

▼『風に濡れた女』の塩田明彦監督(『月光の囁き』『害虫』)。「春画じゃないけれど、ロマンポルノは日本の文化として胸を張っていいのかもと思いました。大げさに言うと、うまくやればJホラーに準じるサブジャンルとして、世界に押し出しうるものかもしれない」。昨年、ロカルノ国際映画祭コンペティション部門で『風に―』が上映され、観客や批評家筋の反応を見て、そう思ったという。

▼『牝猫たち』の白石和弥監督(『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』)。「ある映画会社は『企画を出しなさい』となると、みんな漫画喫茶にこもって、映画化されていない漫画を集めて読むそうです。そんな“原作ありき”の日本映画の現状は寂しい。ロマンポルノが一石を投じることになればいいと思います」

▼『アンチポルノ』の園子温監督(『愛のむきだし』『ヒミズ』)は、今ロマンポルノをやる意味に疑問があって一度は断ったそうだが、「やっぱりオリジナルで撮れるのは楽しかったですよ。撮影期間は1週間っていう縛りもいい。すごく集中して撮れるから」と語った。

▼『ホワイトリリー』の中田秀夫監督(『女優霊』『リング』)。「自由度が高く、発想で勝負をかけたのがロマンポルノで、今回のリブートにもそれが生かされている。第2弾、第3弾と続けて、女性監督だけの回もあればと考えると、夢が広がると思う」。中田監督はかつてロマンポルノに憧れて日活に入り、助監督を務めた経験がある。

▼5作の主演女優の中で、筆者が驚いたのは『風に濡れた女』の間宮夕貴。男の前に突然現れ、「アンタは私にロックオンされたんだ」と挑発する強烈な役を見事に体現した。取材では飾り気のない話しぶりだが、劇中ではエネルギーを発して頂点に君臨、躍動している。 

 映画冒頭、彼女が着ているTシャツにプリントされた英語の短文に、大笑いさせられるのだが、間宮は「ロカルノで爆笑が起きて、『何で笑ったの?』って現地の人に理由を聞くまで、監督も私たちも誰も、英語の意味を気にしたことがなかったんですよ!(笑)」。(敬称略)

(宮崎晃の『瀕死に効くエンタメ』第94回=共同通信記者)

★当欄で10月に紹介したイタリアのドキュメンタリー映画『LIBERAMI リベラミ』(原題)が、セテラ・インターナショナル配給で今年、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開されることが決定しました。悪魔払い師(エクソシスト)に密着した映画で、ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門の作品賞受賞作です。