 |
| 受賞決定会見で撮影に応じる田中慎弥さん(中央)。左は直木賞の葉室麟さん、右は芥川賞の円城塔さん
|
「もらっといてやる」「(受賞は)当然だから当然」「とっとと終わりましょう」―。『共喰い』で第146回芥川賞に決まった田中慎弥さんが、記者会見での不機嫌そうな態度と傲慢にも聞こえる発言で一躍注目を集めている。
動画サイト「ニコニコ生放送」でも中継された会見は約8分。田中さんは晴れの舞台で喜びを語るどころか、ニコリともせずため息交じりの応答に終始した。「何がそんなに不満なんだ」と突っ込みを入れたくなったが、ネットには「超かっこいい」「作家はこうでなくては」「世間知らず」など、賛否両論のコメントがあふれた。
田中さんが芥川賞にノミネートされたのは今回が5回目。その個性は、2007年に初めて候補になったときから際立っていた。
候補作の主人公は30歳で働いていない男。田中さんも高校を卒業してから働いたことがなかった。いや、働こうと思ったことがなかった。理由は「働くのが嫌だから」。それが何か?と言わんばかりに、つまらなさそうに答えた。
さらには、パソコンになじめず原稿は鉛筆で手書き。携帯電話など持っていない。そこに「ニート文学」とか「作品の現代性」といった何らかの意味や動機を見出そうとすると、首を不思議な角度に傾けて「特にないです」と一言。
どうやら田中さんは、今回に限らずずっと不機嫌なのだ。沢尻エリカもそうだったが、機嫌がいいはずの状況で不機嫌な人を見ると、そのギャップがおかしみに変わってくるような気がする。
だが振り返ってみると、田中さんは作品や創作姿勢については丁寧に答えている。繰り返し語っているのは「とにかく毎日書き続けていく」ということ。20歳のころから、小説を書かなかった日は一日もないという。作品や文学は語るが、自分自身を含めそれ以外のことはどうでもいい。肝心なのは文学だという愚直さが、冒頭の会見にも表れているように思う(彼なりのサービスはあるにしても)。
文学賞の中で芥川、直木賞ばかりが大きく報道されるせいか、近年は現役商社マンの磯崎憲一郎さんや破滅型私小説作家の西村賢太さんら、作品よりも「キャラ」に注目が集まる傾向にある。田中さんの不機嫌キャラは、それ自体が昨今のキャラ全盛に対する皮肉になっているようにも思える。(加藤義久・共同通信文化部記者)
|