東日本大震災

流域再生、次代が担う

山も川も海も、厳しい現状 「自然と暮らす」価値見直す
写真:流域再生、次代が担う

長良川の河原で川への思いを巡らす(右から)蒲勇介さん、北村隆幸さん、水野馨生里さん、杉山貴紀さん、小森胤樹さん=岐阜市長良

 第30回の節目となる全国豊かな海づくり大会は今年、史上初めて海なし県の長良川という河川会場で開催。漁業振興だけでなく環境保全の大切さを全国に発信した。本紙ではこれを、閉塞感が漂う旧来の社会から新たな価値観に基づく新しい時代への潮目ととらえ、山、川、海がつながる豊かな環境の保全と、それを担う地域再生の動きを流域に追った本連載企画を約半年間にわたり掲載してきた。

 取材を進めると、山も川も海も、現状は予想以上に深刻だった。しかし、流域のそこここで疲弊した地域を再生しようという新しい動きを見た。豊かな環境を取り戻すことと、流域の各地域が今後も存続し、人々が豊かに暮らしていけることとは切り離せない。その主体は、流域に住む私たち自身と知った。

 取材に協力していただいた方、情報や意見をいただいた方、読者に感謝しながら、岐阜市の長良川河畔で先日行った流域の若者たちの座談会「流域への思い、まちの未来」をもって締めくくりとしたい。

 以下は、コーディネーターの富樫幸一岐阜大地域科学部教授の寄稿「座談会を振り返って」。

 長良川の流域には、河口堰(ぜき)の運動などをきっかけに郡上に住み着いた人もいる。和紙や水うちわ、林業など伝統的な産業の再生にかかわったり、エコツーリズムの受け入れに携わっているNPOもある。地域の資源の見直しや発掘を、フリーペーパーやブログなどのメディアを通じて行っている人たちもいる。地元の人たちとのつながりをつくりながら、新しい担い手が現れているのは心強い。

 しかし、林業でも鵜飼などの観光でも、仕事や生活を維持していく難しさに向き合わなければならないことも、率直に語られた。第30回全国豊かな海づくり大会に先立って岐阜市で開催された市民による海づくり大会でも、この流域がかつて誇っていた林業、漁業や釣り、食品業にも、長良川の状況の変化が影を落としていることが語られた。河口堰の問題だけではなく、上流域での開発や山林の変化が、中下流域だけではなく、伊勢湾にまで影響を及ぼしている。

 交通や情報ネットワークの整備を通じて、名古屋から岐阜、関や美濃、郡上まで、つながるチャンス自体は広がっている。それでも人口減少の中での地域格差や、財政危機などの条件は厳しい。かつては山や川の資源と流域の町は、お互いに依存しながら暮らしを成り立たせていたのだが、現在の産業や流通の構造はまったく違ってしまっている。

 われわれは「健全な水循環」や「流域のガバナンス」といった言葉も使うが、こうした地域の現実に即したものでない限り、具体的なビジョンにはつながっていかないだろう。

 住民や企業、NPOや行政の人々が、出会い、議論し、行動する機会を豊かなものにしてこそ、自然を再生して、生活や文化を成り立たせる、豊かな山と川、海のつながりをよみがえらせることに通じるのではないか。地元の大学なども、調査や、市民、行政と一緒になった活動を通じてこれからもさらにかかわり続けていきたい。