「山で水が生まれ、里山で食べ物がつくられる。田舎の生活が都会を支えていることに少しでも多くの人が気付き、力を貸してもらえれば」と話す北村周さん=郡上市明宝畑佐、こうじびら山の家
郡上市明宝で古民家を改装した宿泊施設「こうじびら山の家」を運営するNPO法人代表理事の北村周さん(26)は小学5年生の時、神戸市長田区で阪神・淡路大震災の直撃を受けた。目の前で高速道路が崩壊した。「災害現場ではお金はまったく役に立たなかった。すべてがお金で回っている都会の怖さを感じた」。田舎暮らしが夢となった。
2006(平成18)年、後に山の家となる古民家に移り住んだ。学生時代に山と川の学校(郡上市八幡町)で自然体験事業のアルバイトをしたのがきっかけ。吉田川をはじめとする自然に魅せられたのと同時に、「郡上にはお金以外のつながりが根付いていた。ここでなら、何かが起こった時も、助け合いながら前向きに生きられると思った」
宿泊者にはかまどでのご飯炊きや炭焼きなどの体験メニューを提供する。「田舎暮らしはスローライフというが、実際はハードライフ。自然の都合、地域の都合があって、自分の都合はその後。都会ではお金を払い、サービスとして得ることも自分でやらなければならない」。あこがれだけでは生きていけない田舎の真の姿を知ってほしい。その上で考えをめぐらせてほしい。「山で水が生まれ、里山で食べ物がつくられる。田舎がぼろぼろになれば、自分たちの生活も危うい」と。
山の家からほど近い民宿「愛里」(郡上市明宝)の若おかみ石田有利さん(26)は、三河湾と伊勢湾に挟まれた愛知県美浜町の出身。山と川の学校でのアルバイトを通じて夫吏さん(33)と出会い、今ではグリーンツーリズムを推進する農家民宿として知られる愛里を切り盛りする。
祖父と叔父は漁師という根っからの海っ子だからこそ、気付くことがある。「子どものころに遊んだ浜が汚くなって、祖父も魚の捕れる量が減ったと言っていた。郡上の川はこんなにきれいなのに」。脇を流れる川が古里の海につながっていると考えた時、日々の洗剤の使い方までが気になった。「自分が山や川をよく知らなかったと同じように、山の人は海を知らない。大そうなことは言えないけれど、自分が岐阜と海との小さな懸け橋になりたい」
(ぎふ海流取材班)