ふるさとへの便り

ベトナム・カンボジア国境

入出国審査に苦労 越境の際は情報収集を
写真:ベトナム、カンボジア国境

ベトナム、カンボジア国境

 日本から外国へ出かける場合は基本的に飛行機を使うため、われわれ日本人にとって地続きの国境をまたぐことは新鮮に感じられます。国境には入出国審査があり、不法侵入者を防ぐため厳重な警備が敷かれていることが多いのですが、アジアで地続きの国境をまたいでみると思わぬ出来事に遭遇します。

 ベトナムの首都ホーチミン市からカンボジアとの国境の町モクバイまでは距離にして70キロです。ホーチミン市内から、ベトナム南部の水田地帯をゆっくり車で2時間くらい走ると、ベトナムとカンボジアの国境に到着します。この国境からカンボジアに入国する場合、いったんベトナムの国境前で車を降り出国手続を行い、徒歩で国境をまたいだ後、カンボジアで入国手続きをすることになります。

 ベトナムの国境前で車を降りると、十数人のベトナム人たちが私の方に集まってきました。「バイクに乗っていくかい?」等いろいろな声が聞こえてきましたが、そうした声には脇目も振らず、私はベトナム出国手続きの列に並びました。

 出国手続きの横で先ほどとは別のベトナム人が寄ってきて「ここは混んでいるから別の出入り口を案内するよ」と手招き。そのベトナム人いわく「別の出入り口を通れば、出入国手続きをせずカンボジアへ渡り、再度ベトナムへ帰ってこられる」とのこと。万一その出入り口を通れば間違いなく違法入出国で警察に捕まることでしょう。

 こうした罠(わな)を振り切って出国手続きを終え、ベトナムとカンボジア国境をまたぎ、カンボジアの入国手続きへ向かうと、今度はベトナム人に加えカンボジア人までもが私の周りに押し寄せてきました。群集を振りほどきながら、やっとの思いで入国手続きの場所にたどり着きましたが、ビザ申請用紙や入国カードが所定の場所にありません。

 担当者に聞いても、「所定の場所にあるはず」の一点張り。押し寄せてきたカンボジア人の中の1人がおもむろにビザ申請用紙と入国カードをポケットから取り出して言いました。「申請用紙と入国カードで10米ドル」。幸い予備の申請用紙と入国カードを持参していたので助かりましたが、絶句しながらカンボジアへ入国しました。

 その後カンボジアで仕事を終えベトナムへ再入国しようとすると、カンボジア人たちが再び集まってきました。カンボジア人いわく「別の出入り口を通れば…」。

 たった100メートルの国境の間には、生活を懸け必死にお金を稼ごうとする人々たちがたくさんいます。地続きの国境をまたぐ場合は、十分な情報収集とご準備を。

【臼井英樹さん】
写真:臼井英樹さん
 うすい・ひでき 大垣共立銀行香港駐在員事務所長。大垣市出身。1990年、同行入行。同行ニューヨーク駐在員事務所、市場金融部を経て2010年9月から香港駐在員事務所で取引先の海外進出支援等担当。

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