ふるさとへの便り

ブラジルへ日本語教師として派遣

言葉の大切さ実感 現地の文化や習慣知る
写真:リコーダーの指導=ブラジル、ロンドリーナモデル校

リコーダーの指導=ブラジル、ロンドリーナモデル校

 「ポストの前で待っていて下さい」。日本語でそう言われたのでポストを探したがどこにもない。何とか友人と落ち合うことはできたが、そこはガソリンスタンドの前であった。後に、現地語でポストはガソリンスタンドの意味であることを教えてもらった。

 ブラジルに日本人が移住してから104年。長い日系社会の歴史の中で現地語と日本語が混ざったコロニア語と呼ばれる言葉ができたのだ。

 ある日、日系人の知人宅にブラジルでは珍しく浴槽があるというので招かれた。風呂から上がると「お風呂はおいしかったですか」と聞かれ少し困惑してしまった。しかしこれは現地語で、おいしいも気持ち良いも同じ一つの単語で表現されるため、間違って覚えた日本語なのだと聞き、顔を見合わせて笑った。

 日系人の多くが正しい日本語を知りたいと思い、間違って使ってしまっても笑い話に変える陽気なブラジルらしい風土。現地に解け込み日本語の使用頻度は徐々に減少してきているが、日本の心を忘れたくないという気持ちは根強いのだ。

 私は未だに現地語で戸惑うことがある。先日、「マリードアルゲウ」という看板を見かけた。直訳すると「夫、貸します」。この話題で一日中職場が明るくなったのは言うまでもない。なぜなら、これは家の主がするような簡単な仕事(日曜大工)をしますという意味だったからだ。

 言葉を覚えるということ。それはその土地の文化、習慣なども包括的に知るのだということを身をもって体験した2年間であった。日本語教師として派遣され、主に日系の子どもたちに対して書道や音楽の指導を中心に行ってきた。

 日本語離れが進む日系社会に対して日本の文化に親しんでもらい日本に興味を持ってもらうのはもちろん大切だ。しかし日本語を教えることこそが、今の日本を伝える一番の近道だと気付けたのは、異文化の環境で生活したからだと感じる。

 言葉の裏側にある、その国の背景までを読み取ることができたらどんなに楽しいだろうか。

【加藤武蔵さん】
写真:加藤武蔵さん
かとう・むさし オーストラリアで日本語教授法を学び2010年7月から2年間、日系社会青年ボランティアとしてブラジルに派遣。ロンドリーナモデル校で日本語を指導。土岐市出身。28歳。

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