ふるさとへの便り

中国・山東省曲阜市

「岐阜」語源の都市 孔子生誕地で観光名所
写真:孔子を祀る孔廟の中心建築「大成殿」=中国・曲阜市

孔子を祀る孔廟の中心建築「大成殿」=中国・曲阜市

 「岐阜という名前の由来は? 特に阜という漢字は普段使わないね」。岐阜にご縁のある方なら誰しもこんなことがふと頭をよぎったことがありませんか?

 一説によると稲葉山城を攻め落とした織田信長が「周の文王が国を興した地である岐山の岐」と「孔子の生誕の地である曲阜(きょくふ)の阜」から「天下太平」や「学問の地」となるようにと思い、中国の地名から命名したといわれています。

 さて、その学問の地の由来となった曲阜(中国語読みでチューフー)市ですが、北京と上海の間、やや北京寄りの中国山東省にあります。人口約64万人とこれでも中国では、こぢんまりとした地方都市です。

 市街地を除けば外国人の貴重な足であるタクシーなどの気配すらありません。民家もまばらで、小麦やとうもろこし畑が延々と続き、遠くに石炭採掘らしき黒い山が見えるような、まさしく「阜」という漢字の意味する「小高い土山、丘陵地」の風景が目の前に広がる町です。

 ただ、この曲阜市は、儒教を興し論語の「子日く」で有名な孔子生誕の地として中国国内ではかなり有名な町であるらしく、観光名所の最高レベルであるAAAAA級に指定されており、北京の故宮博物院と同じ位置にあります。1994年にユネスコ世界遺産にも登録され、毎年9月下旬には国際孔子文化節が開催、世界中の儒教家が集まるところです。

 そんな観光地ですから、北京―上海間を疾走する高速鉄道の巨大な駅舎があり、駅前からは、名古屋の久屋大通りに匹敵する道幅の「孔子大道」が、孔子の住まいであった「孔府」や孔子一族を祀(まつ)る「孔廟」まで一直線に延びています。その「孔廟」周辺は、観光案内図、売店、土産物屋、観光用の電動カートなどが利用でき、岐阜公園と同様に美化が進んでいました。

 地方からバスで何時間もかけて来た中国人(同じ色の帽子をかぶった)団体旅行の一団が、石碑に刻み込まれた論語などの説明を熱心に聞き入ったり、孔子一族の墓園である「孔林」の一番奥にある孔子の墓石には、花がたくさん供えられ傍らで一途(いちず)にお祈りをする中国人たちの姿がありました。そこには列に割り込む中国人の姿はなく、「仁・義・礼・智・信」の儒教思想により、年長者や家族を大切にするなど本当に思いやりのある中国の方々がたくさんおられました。

 上海に戻り、都会の喧騒(けんそう)の中で暮らす日々ですが、今回は、中国人、日本人の境なく、人間としてあるべき姿を垣間見て、「岐阜」はそんな思いやりのある町の一字に由来していることをうれしく思いました。

【岩村志さん】
写真:岩村志さん
 いわむら・ひとし 十六銀行上海駐在員事務所長。86年同行入行。市場国際部を経て11年10月から上海駐在員事務所勤務。取引先の海外進出支援などを担当。羽島郡笠松町出身、49歳。

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