ふるさとへの便り

モンゴル

真冬、氷点下30度に まつげ凍る厳しい寒さ
写真:配属先の学校。モンゴルの冬はとても寒い

配属先の学校。モンゴルの冬はとても寒い

 モンゴルの冬がどれくらい寒いかというと、首都のウランバートル市なら真冬にはマイナス30度に達することがある。田舎の寒い地域に行けばマイナス40度を体験できる。

 マイナス30度という気温が、身体にとってどのようなものであるかは、実際に体験してみなければ分からない。僕の経験では、マイナス26度を下回ると平気な顔をして外を歩くのは困難だ。

 顔面にたくさんの針が突き刺さるような不思議な感触を覚える。“冷たい”というよりは“痛い”という表現のほうがしっくりする。まつげが凍るので、瞬きをすると違和感がある。

 二重の手袋と雪山用のダウン・ジャケットを身につけていても、寒くて歩くのが嫌になってくるほどだ。これを得難い体験だと受け止めるか、うんざりするかは当人次第だが、いずれにせよ生半可な気持ちで外出することは早晩できなくなる。

 モンゴルに赴任しておよそ1年半が過ぎた。夏が終わると9月には雪が降り始め、徐々に寒さが深まり、翌年の5月でもまだ雪が降ってくる。1年の大半が寒い。僕の勤務先である国立職業訓練学校は、暖房が動き始めるのがとりわけ遅くて、秋はいつも寒い思いをしながら活動をしている。

 学校では主にグラフィック・デザインを教えている。ようやく学生ともモンゴル語で会話ができるようになってきた。彼らの考えていることや、実際に話していることを理解できる意義は大きいと思う。

 「この学校の先生で一番の美人は誰だと思いますか」などと尋ねられて真面目に答えると、学生は言う。「いやぁ、あの先生は性格が悪いっス」。数カ月後に地球が滅亡するらしいという話をどこからか聞きつけて来て、「先生、日本に帰れなくてかわいそうですねえ」などと心配してくれる。

 聡明(そうめい)な学生もいれば、あきれるくらい無邪気な学生もいて、それがこの国の気候の厳しさを少しだけ和らげてくれているような気もする。講義よりも休み時間のほうが楽しいのは学生だけではないようだ。

【桐山岳寛さん】
写真:桐山岳寛さん
きりやま・たけひろ デザイナーを経て2011年3月より2年間、青年海外協力隊としてモンゴルに派遣。ウランバートル市内の専門学校でグラフィック・デザインを指導。不破郡垂井町出身。31歳。

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