ふるさとへの便り

中国化する香港

北京語の重要さ増す
写真:香港島西部の山の麓に位置する香港最古の大学「香港大学」

香港島西部の山の麓に位置する香港最古の大学「香港大学」

 香港が英国から1997年に返還されて今年7月で16年になります。返還前、世界中のエコノミストを中心に言われていたことが、「香港の中国化」でした。

 当時、米国雑誌は「香港の死」と題した記事を掲載して返還後の香港の衰退を予想し、同年のアジア通貨危機では香港は世界の機関投資家からターゲットにされました。

 しかし、今では返還前に海外移住をしていた香港人の多くが戻り、一国二制度の下、香港経済は自由貿易港、国際金融センターとして引き続き成長を続けています。懸念されていた経済自由度でも世界トップの座を19年連続で維持しています。

 久しぶりに香港を訪れた人に香港の印象を聞くと、皆が「英語が通じない店が増えた。昔はほとんど聞くことはなかった北京語を街でよく耳にする」と共通して言います。

 香港の公用語は、英語と中国語です。香港では、英国植民地だった歴史的背景から長い間、英語教育が重視され、根強く残る。英語が堪能であることが社会的地位の上昇手段であるとの社会通念から、子を持つ親の英語教育は熱心です。事実、香港のビジネスシーンでは英語は重要言語で、香港の大学を卒業した学生は、ほぼ全員が英語を流暢(りゅうちょう)に話します。

 返還から1年後の98年、それまで英語で授業をしていた中学校のうち約4分の1だけが継続して英語教育を行うことが許可され、それ以外は広東語での授業に切り替えられました。

 中国返還の際、教育現場では「両文三語」、英語と中国語の読み書きができ、広東語、英語のほか、中国の公用語である北京語(中国標準語)が話せるという教育方針の下、小学校から北京語学習がカリキュラムに取り入れられたことで、香港では、北京語を流暢に話す新しい世代が育ちつつあるようです。

 政府統計局が実施した使用言語に関する調査でも、会話能力で「良い」と答えたのは圧倒的に広東語(85%)ですが、北京語(24%)が「良い」と答えた人が英語(23%)を上回ったことは、北京語が英語と並ぶ重要言語になってきていることを物語っています。中国本土からの香港旅行が段階的に解禁されたことに伴う中国人観光客の飛躍的増加や、中国本土企業の香港進出などから、香港人にとって北京語も、今では就業機会や所得を得る手段の一つとなってきているようです。

【村瀬正さん】
写真:村瀬正さんさん
 むらせ・ただし 十六銀行香港駐在員事務所長。東各務原支店長を経て2012年1月から同事務所。中国華南・東南アジアなど取引先の海外進出支援等を担当。岐阜市出身。48歳。

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