ふるさとへの便り

ベトナム

外資系小売業が進出
写真:連日多くの若者でにぎわうマクドナルドのベトナム1号店=ホーチミン市

連日多くの若者でにぎわうマクドナルドのベトナム1号店=ホーチミン市

 経済指標の一つに、イギリスの経済専門誌エコノミストが1986年に考案したビッグマック指数という指標があります。ファストフード大手マクドナルドが提供するビッグマックの品質は全世界でほぼ同じですが、販売価格は原材料費や店舗の光熱費、店員の労働賃金などを元に決定され、国ごとに違います。こうしたことからビッグマック指数は世界各国の経済力や実効為替レート、総合的な購買力を測る指標として使用されています。

 今年2月、この指標対象国にベトナムが新たに加わりました。これは何を意味するのか、いくつか考えてみたいと思います。まず考えられるのは、ベトナムの市場経済化の進展や経済成長に伴う所得向上です。昨年のベトナムのGDP(国内総生産)成長率は5・42%で、1人当たり約1900米j(約19万円)。これは日本の70年ごろの水準で、商都ホーチミン市の1人当たりGDPは既に3千米j(約30万円)を超えています。マクドナルドが日本に進出したのは71年であり、マクドナルドのベトナム進出を裏付けると言えます。

 ベトナムのビッグマックは1個6万ドン(約300円)と、所得、物価水準を踏まえるとやや高価と言えますが、新しいものが好きなベトナム人には好評で、マクドナルド1号店は連日多くの若者でにぎわっています。

 次に考えられるのは米越関係の改善です。ベトナムの人口は約9千万人と世界14位を誇りますが、マクドナルド進出は国・地域別で120番目となります。現在、ホーチミン市の生活で、ベトナム戦争を意識することはほとんどありませんが、これほど進出が遅れたのは社会主義という経済システムもさることながら、やはりベトナム戦争の影響が大きいと言えるでしょう。

 ここ最近、ベトナムではスターバックスやダンキンドーナツ、バーガーキングといった外資系チェーン店の進出が目立ちます。ベトナムには外資系小売業の多店舗展開を制限する「エコノミックニーズテスト」という規制があります。しかし、ベトナム政府は、規制の適用除外条件を示すなど、規制緩和に向けた動きを徐々に見せています。また、マクドナルドはベトナムでの事業パートナーにズン首相の女婿グエン氏を迎え、今後10年で国内100店舗を目指すと宣言しています。マクドナルド進出により、食生活の選択肢が増えることはうれしいことですが、ホーチミン市に暮らす一市民としては、ベトナムの個性が薄れていくような気もします。今後も外資系小売業の動向に注目していきたいと思います。

【伊藤健太郎さん】
写真:伊藤健太郎さんさん
 いとう・けんたろう 大垣共立銀行ホーチミン駐在員事務所所長。1997年入行、愛知法人営業部調査役、半田支店次長、人事部詰研修(みずほコーポレート銀行ホーチミン支店)を経て、2012年3月から大垣共立銀行ホーチミン駐在員事務所勤務。愛知県出身。

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