ふるさとへの便り

イギリス

平和願う赤いポピー
写真:ロンドン塔のお堀=英国

ロンドン塔のお堀=英国

 今年4月から一般財団法人自治体国際化協会ロンドン事務所で勤務を始め、8カ月が過ぎました。ロンドンの冬は日照時間がとても短いので、この時期は朝8時ごろにようやく夜が明け、午後4時ごろに日が暮れ、真っ暗になります。だからと言ってさみしいわけではありません。日没後は街中がクリスマスのイルミネーションで輝き始めます。

 さて、今回は英国で行われた今年の戦没者追悼行事について紹介したいと思います。英国では第1次大戦の終結日である11月11日を「リメンバランスデー(戦没者追悼記念日)」とし、11日に一番近い日曜日には各地で追悼行事が開催されます。第1次大戦後、赤いポピーの花が欧州の戦場跡地一面に咲き乱れたことから赤いポピーが戦死者追悼の象徴とされ、リメンバランスデーに合わせた「ポピーアピール」と呼ばれる募金活動では、募金をすると赤いポピーの造花やブローチが手渡されます。そのため、10月下旬ごろから、テレビや街で胸に赤いポピーの花飾りを衣服につけている人々を多く見かけます。

 第1次大戦開戦から100年の今年は、テレビ番組や博物館の展示などでそれにちなんだ多くのプログラムを目にしました。特に印象的だったのは、ロンドンの観光名所の一つであるロンドン塔で行われた、堀に陶器で作られた赤いポピーの花を植えていくというプロジェクトです。植える花の数は第1次大戦中に犠牲になった英国と植民地の兵士の数と同じ88万8246本。戦没者一人一人を花のオブジェで表現しようというものです。100年前に英国が第1次世界大戦に突入した8月5日から一つ一つ手で植えられ、11月11日に最後の一本が植えられました。

 残念ながら、リメンバランスデーにロンドン塔に足を運ぶことはできませんでしたが、新聞やテレビで見た一面ポピーの花で真っ赤に染まった写真や映像は今でも忘れられません。プロジェクトに使用した陶器の花は、翌12日から撤去され、1本25ポンドで販売され、その売り上げはイラクやアフガニスタンで負傷した兵士や家族を支援する慈善団体に寄付されたそうです。

 この「赤いポピーの花」の大きなプロジェクトが行われたことをきっかけに、欧州での戦争の歴史を知る機会を得ました。おそらく、今年ロンドン塔に足を運んだ世界中の多くの人々も、私と同じようにその赤い花を見ることにより、戦争で亡くなった兵士のことを思ったことでしょう。この赤いポピーの花の取り組みが続くこと、そして、それ以上にこの花の数を増やさないことを心から願います。

【山田佳代さん】
写真:山田佳代さんさん
 やまだ・かよ 今年4月、岐阜県庁から一般財団法人自治体国際化協会ロンドン事務所に派遣。所長補佐。担当業務は事務所の会計事務、国内外への広報活動など。大垣市出身。

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