ふるさとへの便り

ネパール

山村で「ごみ」を編む
写真:化学染料を使わない自然素材で生まれた色とりどりのロクタ紙=ネパール・レカニ村

化学染料を使わない自然素材で生まれた色とりどりのロクタ紙=ネパール・レカニ村

 寒いネパールの朝、鶏がコケコッコーと鳴くより早く、お母さんたちが起床する。ビーチサンダルを引きずって歩く音が聞こえる。私は鶏がしばらく鳴いてからしか起きられない。目をこすりつつ戸を開けると、「ゆっくりと起きたもんだね」とお母さんがチヤ(茶)を持ってきてくれる。砂糖たっぷりの紅茶だ。ピリリと辛いチヤマサラ(主にショウガの粉末が入ったお茶用香辛料)が私の目を覚まさせる。

 今日は朝7時から地元の女性組合とロクタ紙に関する話し合いだ。「とりあえず何か食べなさい」と言って、彼女はチャウチャウ(インスタントヌードル)のパックを開けた。私はチャウチャウをかきこんだ。

 お母さんたちが若かりし頃、こんな朝の生活は山村にはなかった。15年の間に山村に普及したビーチサンダルとチャウチャウ。これらが普及する前は無いなりの生活をしていたが、手に入るようになり女性たちは大助かりだ。山の女性は家事から家畜の世話まで全てをこなすが、ビーチサンダルならどの場所にも適している。チャウチャウは急な来客でもすぐに用意できる。

 女性開発の第一歩はビーチサンダルとチャウチャウの普及と同じだ。最初は受け入れがたい新しい物事をいかに浸透させるかが重要だ。

 一方、伝統とも共生する必要もある。トウモロコシの葉で編んだ座布団はネパールの伝統的な再利用だが、最近はビニールごみで座布団を作る女性が増えた。それに乗じて私も、山の女性たちとインスタントヌードルのごみを再利用した座布団やタワシづくりの普及をしている。チャウチャウがネパールの山村で本当の意味において浸透するように。

 また、ロクタ(三椏系植物)を用いた、女性組合によるロクタ紙製品の普及も計画している。ネパールの美濃和紙といったところだ。ヒマラヤ山脈に囲まれた村で、私は紙漉(す)きを眺めながら故郷岐阜県を思い出す。あと1年間、ビーチサンダルで山を歩き、お母さんたちと一緒にごみを編みつつ、紙づくりと関わりたい。

【伊藤理恵子さん】
写真:伊藤理恵子さんさん
 いとう・りえこ 大学卒業後、日本、中東、欧州でのボランティア活動を経て2014年3月から青年海外協力隊としてネパールに派遣。バグルン郡女性子ども事務所で女性開発支援に関わっている。各務原市出身。25歳。

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