ふるさとへの便り

カンボジア

すぐ諦めていた自分
写真:ラジオ体操の練習をする子どもたち=カンボジア

ラジオ体操の練習をする子どもたち=カンボジア

 トゥクトゥクで揺られること30分。のどかな村の景色の中に私が巡回している学校の一つカポー中学校がある。学校に到着すると子どもたちは満面の笑みで「ニャックルー(先生)!」と近寄ってくる。彼らの笑顔はカンボジアに降り注ぐ灼熱(しゃくねつ)の太陽に負けないくらい輝いている。

 私は現在、カンボジアのクラチェ州で、生徒会活動活性化のために各学校を巡回して運動会を広めている。先週、カポー中で運動会を終えたばかりだが、実は3カ月前まで私はこの日を迎えられるとは思ってもいなかった。なぜなら、この学校では体育の授業時間は確保してあるものの、肝心の体育教員が今年から不在なのだ。カンボジアでは、このようなことは決して珍しくない。学校では情操教育の体育、音楽、図工がカリキュラムに組み込まれていなかったり、組み込まれていても授業がまともに行われていなかったりするのが現状だ。

 運動会を知らないカンボジア人が運動会を実施するためには、体育の時間に競技練習をしっかりと行わなければいけないため、体育教員不在での運動会開催はかなり厳しい。しかし、カポー中の校長先生や子どもたちは真剣な顔で「それでも運動会やりたい!」と言うので、結局運動会を開催することになった。

 あれから3カ月後の運動会当日。当初の心配はよそに、カポー中の運動会はどの学校よりも素晴らしいものとなった。練習中から生徒会の生徒たちは皆をよくまとめ、自主的に考えて行動をしていた。そして、協力してくださる先生にも出会えた。

 3カ月間、彼らの行動を見ていて、物や人材がないとすぐに諦めてしまう自分に気が付いた。そして、何よりも子どもたちの力を信じていなかった。あるもの、いる人たちの中で工夫して成し遂げる。当たり前の姿勢を彼らは気付かせてくれた。あと1年。日本の運動会ではなく、カンボジアの運動会をするため、そして子どもたちの笑顔に会いにいくため、今日も田舎道をトゥクトゥクで駆け抜ける。

【中間優希さん】
写真:中間優希さんさん
 なかま・ゆうき 飛騨高山高校教諭。2014年7月から青年海外協力隊としてカンボジアに派遣。学校で生徒会活動の活性化に取り組む。岐阜市出身。30歳。

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