ふるさとへの便り

ベトナム

交渉で経済感覚磨く
写真:地元住民でにぎわうドン・スワン市場=ベトナム・ハノイ

地元住民でにぎわうドン・スワン市場=ベトナム・ハノイ

 私がハノイに来て8カ月、人々の活気に圧倒されながら日々奮闘しています。国の最古の帝都として政治、経済、文化の中心となっているハノイは、日本の昭和時代中頃の風景と近代的な開発が混然一体となった不思議な街です。「中国とフランスの影響を強く受けた街」「高い経済成長を遂げている中にあっても歴史や文化を重んじる街」「上昇志向の強い若者が多くいる街」といった印象があります。

 近代的な高層ビルが立ち並ぶビジネス街を離れれば、美しい水辺や中国風の旧市街とフランス・コロニアル調の建物が混在する魅力的な風景を堪能できます。

 旧市街にあるハノイ最大級の市場(ドン・スアン市場)では、食料品や日用雑貨、衣料品などの品ぞろえが豊富で値段も安いため、朝から地元住民で大にぎわいです。そこには成熟した日本とはかけ離れた光景が広がっており、とても刺激的です。

 私が初めてドン・スアン市場に行った時、物を買うのにとても苦労したことを覚えています。基本的に「定価」という商習慣を持たないことからタフな値段交渉が要求されます。至る所から「バオニュー(いくら)?」の声が聞こえてきます。すぐに交渉を諦めた私の横では、店主と主婦らしき人による値段交渉の応酬が繰り広げられていました。このようにベトナムの人たちは、「バオニュー」を連発することでさまざまな物の値段に関する情報を蓄積し、交渉を繰り返す中で経済感覚を磨いているのだと感じました。

 また、ベトナムの若者の上昇志向の強さには驚かされます。語学や専門スキルなど、発展途上国でチャンスをつかむために最も確実な手段を模索し、そのための努力は惜しまないようです。その反面、「幸せであるか」ということを常に意識しています。私の職場の同僚もほとんどが20代と30代の若者です。彼らの親は、戦争世代で自身も貧しい幼少時代を過ごしてきています。「たとえ富や名声を得ても、自分や家族が幸せでなければ意味がない」ことを常々語っています。目覚ましい経済発展が現在進行中のベトナムは、日本の高度経済成長期と比べられることが多いですが、その背景にある歴史や文化、人々の考え方は大きく異なります。私はそれを肌で感じながら、国の発展を見守っていきたいと思います。

【川瀬寛之さん】
写真:川瀬寛之さんさん
 川瀬寛之(かわせ・ひろゆき) 十六銀行名古屋営業部部長代理、愛知営業戦略部調査役を経て、2014年11月からベトナム投資開発銀行(BIDV)へ派遣(海外サポート部所属)。大垣市出身。

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