ふるさとへの便り

エルサルバドル

日本語でアニメ理解
写真:日本語公開講座の生徒たち=エルサルバドル

日本語公開講座の生徒たち=エルサルバドル

 少女は携帯を前にかざした。リズミカルな音楽が流れた。歌詞はスペイン語でなく日本語だ。そしてかっこいい女性の写真を指差しこう言った。「ワタシノ スキナ ニホンノ カシュ デス」。国立エルサルバドル大学の公開講座プレゼンテーションでの13歳の少女の言葉だった。写真の歌手を全く知らなかった。その名はオリベ・リサ。授業後すぐに検索した。織部里沙、関市出身とあった。1万キロ以上離れた中米エルサルバドルと岐阜県の2点が線で結ばれた一瞬だった。

 日本語公開講座への希望者はほとんどがアニメファンであった。片仮名の指導はもっぱらドラゴンボールのキャラクター。生徒は目を輝かせ、砂に染み入る水のごとき速さで理解した。

 受講希望者は当初100人、2クラス計60人を受け入れ、残り40人は待機組となった。エルサルバドルの人口は600万人強、四国ほどの小さな国だ。しかし、こんなにも多くの日本語学習希望者があるとは驚きであった。生徒の熱意に突き動かされ連日教材研究に励んでいる。彼らの望みの第一は「アニメを日本語で聴いて理解したい」なのだ。さらに現地の日本語教師も教育熱心である。数人は週1回2時間休み中にもかかわらず、私のところまで学びに来てくれるほどである。

 「当国は殺人率世界一になりました」。日本国大使館への表敬訪問時に大使からの言葉が今でも耳から離れない。現在もこの不名誉なランクは変わらない。自分の命は自分で守るしかない。歩いている時に突然後ろをわざと向いたりしている。警戒しているぞというアピールだ。幸い今までに危険な場面に遭遇したことはない。場所と時間をきちんと守れば安全度が上がる。さらに生徒も周りでお世話になっている方々もとても優しい。任期は残り約1年。「命を守りながら日本語好きをいっぱいつくろう」。こう言い聞かせながら夢のような毎日をかみしめている。

【堀純兒さん】
写真:堀純兒さんさん
 堀純兒(ほり・じゅんじ) 教員を経て、2015年7月からシニアボランティアとしてエルサルバドルへ派遣。エルサルバドル大学で日本語を日本語教師と学生に指導。多治見市出身。

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