ふるさとへの便り

フィリピン

新大統領手腕に注目
写真:マニラの商業中心地「マカティ」=フィリピン

マニラの商業中心地「マカティ」=フィリピン

 今、ここフィリピンでは、国民の期待が1人の男に集まっている。6月30日、フィリピンの新大統領に就任した「ロドリゴ・ドゥテルテ」である。フィリピンのドナルド・トランプともやゆされた彼に、国民が期待を寄せる背景には、これまでフィリピンが歩んできた歴史が垣間見える。

 戦後、フィリピンは米国主導の経済復興と工業化の進展で、日本に次ぐアジアのトップランナーと称されたものの、政情不安や治安の悪化に伴い、経済が低迷し、「アジアの病人」とまで言われる国へと転落した。しかし近年、政情の安定化とともに、海外の資金が流入し、フィリピン経済の好調をもたらしている。私が住む首都マニラを見渡しても、高層ビルやショッピングモールが次々と建ち並び、従来のフィリピンのイメージを覆すほどの発展を遂げている。

 その好調な経済の恩恵を受けているのは、主に中間層以上の国民であり、特にごく少数の特権階層、いわゆる「財閥」は巨万の富を独占し、フィリピン経済の8割を掌握しているとも言われている。

 一方、1日2ドル以下で暮らす最貧困層は国民全体の約4割(約4000万人)にも上り、低所得層との経済格差は著しいままである。フィリピンにおける「経済成長」という光の裏側には、大きな陰が存在している。

 そのような中、迎えた今回の大統領選。ドゥテルテ氏は、ダバオ市長を20年以上務め、ときには強引な手法で、フィリピンで最も治安の悪いとされたダバオ市を安全な都市へと変貌させた。彼が大統領選で強調したのが、「犯罪・汚職・違法薬物の撲滅」である。彼は「犯罪者に対しては人権法を無視する」など過激な発言をし、批判を受けながらも、低所得者層や、治安の改善を求める幅広い層から支持を得た。

 今回の選挙は、これまでフィリピンが長年苦しんできた問題に立ち向かうために、国民が彼の実行力を必要とし、この国の変化を真に願っていることを証明した結果となった。大統領就任式の所信表明で、ドゥテルテ新大統領は国民に対して、「真の改革」を強く誓った。これから始まるフィリピンの新たな6年間に注目したい。

【渡邉卓弘さん】
写真:渡邉卓弘さんさん
 渡邉卓弘(わたなべ・たくひろ) 2015年5月赴任。在フィリピン日本大使館2等書記官として勤務(岐阜県庁から出向)。経済部に所属し、主に政府開発援助(ODA)、日比間の地方連携等を担当。可児市出身、36歳。

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