ふるさとへの便り

アメリカ

音楽で貧困乗り越え
写真:ハーレム・ジャパニーズ・ゴスペル・クワイヤーによる教会でのゴスペルの風景=米国

ハーレム・ジャパニーズ・ゴスペル・クワイヤーによる教会でのゴスペルの風景=米国

 米ニューヨークでの研修が始まって、5カ月が経過しました。普段はマンハッタンの中心地であるミッドタウンで勤務していますが、限られた研修期間を有効活用するために、休日はさまざまな場所を訪ねることに努めています。その一環として、マンハッタンのハーレムで日本人向けゴスペルワークショップが開催されていると伺い、月に何回か参加させていただいているのですが、今回はそんなハーレムについて話したいと思います。

 仕事や旅行でニューヨークにいらっしゃった方であれば、ご存じの方も多いと思いますが、ニューヨークの犯罪件数は1990年の18万4652件に対して、2016年は10万1716件と減少しており(主要7大犯罪ベース)、治安は大幅に改善されています。

 これは1990年代のジュリアーノ元市長による警察官増員などの取り組みによるものであり、ニューヨークの中でも最も治安が悪いとされていたハーレムも、アパートや賃貸ビルの開発が進み、「Starbucks Coffee」をはじめ、「H&M」「Banana Republic」など日本でもなじみのあるチェーン店が出店しています。

 ハーレムは米国南部から職を求めて移住してきた黒人たちによって形成されたエリアであり、長年貧困に悩まされていたエリアでしたが、2017年夏の大手高級志向スーパーマーケット「Whole Foods Market」の出店は、ハーレムの経済水準が向上した象徴とも言えます。

 このようなジェントリフィケーションが進むエリアでは、家賃や税金の上昇により、それまで暮らしていた人々が生活できず退去を余儀なくされ、それまでのエリアの特性も失われてしまうという問題がしばしば議論されますが、ハーレムでは今も、古き良き黒人文化が根付いているように思います。

 ハーレムの黒人文化の一つであるゴスペル音楽について話すと、本来はキリスト教プロテスタント系の宗教音楽であり、アフリカ系アメリカ人たちが奴隷制度時代に自分たちだけで歌って踊って祈れる場をつくるようになったことが始まりといわれています。日曜礼拝などで耳にすることができ、その華やかな演奏は圧巻です。

 私が日曜礼拝に参加した際は、今年米国で発生したハリケーンの被災者へ祈りをささげていたほか、新しく生まれた赤ちゃんを皆で祝福する場面や、近所の老人が病気がちだからお見舞いをしましょうといった話もあり、町内会のような地域のつながりを大切にしている場所であると思いました。

 ゴスペル歌詞の内容は、神様に感謝して賛美をささげようといったものですが、周りにいる家族や知人にも感謝しましょうといった思いも感じられます。音楽を通じ、ハーレムの人たちは、貧困や差別を乗り越えてきたからこそ、ゴスペル音楽は今もなお受け継がれているのでしょう。私の研修は残り1年ですが、銀行業務のほかにこのような経済・文化にも目を向けつつ有意義に取り組んでいこうと思います。

【尾美康明さん】
写真:尾美康明さんさん
 尾美康明(おみ・やすあき) 2011年、十六銀行入行。岐阜県内の営業店、本部の営業企画を経験した後、17年7月よりMUFGユニオンバンクへトレーニーとして派遣。日系企業向け営業セクションで勤務。可児市出身。

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