ジャポネス・ガランチード 岐阜からブラジル移民100周年

第2部 マルセロ(4) 解決策はサッカー

「自分は何者か」混乱した思春期 
写真:"中学校のときに通っていた日本語教室のクリスマス会での渡辺マルセロ(後列中)=1994年、美濃加茂市内"

中学校のときに通っていた日本語教室のクリスマス会での渡辺マルセロ(後列中)=1994年、美濃加茂市内

 中学校をどう過ごすか。思春期は誰にでも訪れる。日本人の生徒でも問題は抱える。日本で学ぶ外国籍の生徒なら、なおさらだ。

 大阪大学大学院生だった小島祥美(39)は2003年度から2年間、可児市に暮らす不就学の外国人中学生を対象に調査を行った。それによると、不就学の主な原因は教師や学校生活になじめない上、学校で勉強することの意味が見いだせないことだった。

 大学に進学したり就職した外国籍の青少年をみると、中学校での経験がその後の進路の決定を大きく左右すると考えられるという。現在は愛知淑徳大学文学部准教授の小島は、「中学校が要」と指摘する。

 その視点から見ると、渡辺マルセロ(34)は美濃加茂東中学での日々を何とか乗り切った。友達が支えてくれた。

 2年生になり、ブラジル出身の生徒が同じクラスになった。学校側が配慮したのだろう。ところが、この男子生徒とけんかを繰り返した。

 「お前は日本人なのか、ブラジル人なのか」でもめた。マルセロが日本人生徒と話していると、「なんだお前は。日本人になったのか」と彼は怒った。

 外国籍の生徒は、アイデンティティーで混乱することが多い。自分とは何者か。この問いに答えられる者は少ない。問いを抱えた者が、自分自身で見付けていくしかないからだ。日本という異国の地で思春期を迎えたブラジル人の少年たちは混乱し、傷付け合っていた。

 解決策はサッカーだった。昼休み、「ブラジル人らしく」と、けんかした同級生とボールを追った。いつの間にか、他の同級生も入ってきた。やがてクラスの男子16人全員で毎日プレーした。

 日本人もブラジル人も、頭のいい子も勉強が苦手な子も、サッカー部も野球部も水泳部も、運動神経がいい子も太っている子もみんながサッカーをした。

 それぞれの違いはボールの前に解け合った。大人が見たら中学生が遊んでいるだけに見えただろう。だが、そのサッカーは言葉を使わないでお互いを、自分自身を理解する大切な儀式になった。悩んでいたのはブラジル人生徒だけではなかった。マルセロは「多様な背景と性格の子どもたちが、一つの目標に力を合わせた。昼休みのグラウンドは小さな多文化共生社会だった」と振り返る。

 クラスの雰囲気が良くなった。たくさんの友達ができた。いつかブラジルに帰るつもりだったマルセロは、みんなと一緒に高校へ行きたいと一生懸命勉強するようになる。

(敬称略)