ジャポネス・ガランチード 岐阜からブラジル移民100周年

第3部(3) 教育

企業、高い能力要求 日本語話せるだけでは不十分
写真:デンソーのサンタバーバラ工場を視察する県経済ミッションメンバー=ブラジル・サンパウロ州

デンソーのサンタバーバラ工場を視察する県経済ミッションメンバー=ブラジル・サンパウロ州

 経済成長が続くブラジルには多くの日系企業が進出している。ブラジルと他の国が大きく違うのは、日系ブラジル人の存在。もっとも、日系人だからといって就職先が容易に見つかるわけではない。現場で活躍できるかどうかは、教育が大きな意味を持っている。

 自動車部品メーカー大手のデンソー(愛知県刈谷市)は、2011年からブラジル・サンパウロ州でサンタバーバラ工場を操業している。自動車用エアコン、コンプレッサーなどを製造し、南米では唯一の風洞設備を持つ。ブラジルに生産拠点を置く世界のメーカーにも供給する重要拠点だ。

 工場では多くの日系人が活躍する。現地法人のデンソー・ド・ブラジルの役員には日系人が5人。日本語で直接コミュニケーションができる彼らは重宝されている。

 だが、日本語が話せるだけでは不十分。8月に県経済ミッションの一員として同工場を視察した美濃加茂市長の藤井浩人は、同社幹部に質問を投げ掛けた。「私の市には日系ブラジル人の若者が大勢いる。ブラジルに帰る人も多いが、どんな教育が必要か」

 答えは日本語能力ではなかった。同社社長の新保博茂は「工業系の技術を身に付けた人が欲しい。エンジニアが足りない」と回答。営業担当の幹部は英語やグローバルに仕事ができる国際感覚を求めた。

 現地事情に詳しいブラジル東京海上保険の担当者によると、日系企業の多くは多額の費用を掛けて日系人社員を日本に送り、教育している。日本語は話せて当たり前、それ以上のことが求められている。担当者は「日本語もポルトガル語もどっちつかず、というケースが一番大変」と話す。

 日本語もポルトガル語も不十分。そんな状態を「ダブルリミテッド」と言う。サンパウロで、日本から帰国した子どもたちにポルトガル語を教える活動「カエルプロジェクト」を主宰する中川郷子(56)は「日本語もポルトガル語も読み書きができ、その上でパソコンなどの技術を身に付けていないと就職は難しい」と話す。

 日本からブラジルに帰国した子どもたちの支援体制は、カエルプロジェクト以外にほとんどない。ダブルリミテッドで言葉を十分に理解できないと、考える力が育たないという指摘もある。

 ブラジルへの日系企業の進出が進んでいるが、日系人だからメリットがあるということはない。中川は「ちゃんとした教育が必要」と保護者の意識改革を求める。十数年前は中学卒の人が多かったブラジルだが、今は高校の義務教育化が進むなど、経済成長に伴い学歴社会になろうとしている。中川は「ブラジルという国が変わってきている」と強調する。

(敬称略)