ジャポネス・ガランチード 岐阜からブラジル移民100周年

第3部(5) ギアリンクス

南米との懸け橋に アルゼンチンに農場、赤字覚悟の経営
写真:ギアリンクス・バラデーロ農場に立つ中田智洋社長(左)や役員ら=アルゼンチン・バラデーロ市

ギアリンクス・バラデーロ農場に立つ中田智洋社長(左)や役員ら=アルゼンチン・バラデーロ市

 ビュー、ビュー風が吹いていた。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスから約140キロ。高速道路の近くに広がる約600ヘクタールのギアリンクス・バラデーロ農場は、岐阜県民のためにある農地。アルゼンチンで農場を展開して10年、ギアリンクス社長の中田智洋(63)は「経営は難しい。でもここには志がある」と話す。

 美濃加茂市に本社がある同社の目的は壮大だ。岐阜県が食料難に陥ったときに備え、南米の農場でダイズやトウモロコシを育てる。南米に移住した日本人農家を支える。夢のような話だが、実績はある。

 同社は南米で自社や日系人らが育てた非遺伝子組み換えダイズを県内の豆腐メーカーに供給している。その量は県内の豆腐製造業者が1年間に使うダイズの約20%を占めるという。東日本大震災では、パラグアイの日本人農家で構成するイグアス農協からダイズ111トンの無償提供を受け、被災地に豆腐100万丁を贈った。

 経営は赤字が続いている。南米からの高い輸送コストがネックになっている。これまでの赤字を埋め合わせるほど農地の評価額が上昇しているため、最終的には損失は出さない見通しだが、中田は「赤字は経営者として反省しなくてはならない」と言う。

 プロの経営者として中田は、お金は命と考えている。本業は発芽野菜メーカー「サラダコスモ」(中津川市千旦林)の社長。若いころ、わずかなお金が払えず倒産の危機に直面した。「サラダコスモは33期連続の黒字。私はお金にシビア」。そんなプロが赤字のビジネスにのめり込む。南米と日本の懸け橋をなくすわけにはいかないから。

 その思いが今夏、中田にもう一つのチャレンジをさせた。「かやの木芸術舞踊学園 舞踊ゆきこま会」の南米公演だ。

 中津川市を拠点に活動するゆきこま会。8月にアルゼンチン、ペルーで計4公演し約6500人の観客を動員したが、100人近いスタッフの旅費は中田がまかなった。

 公演は大成功だったが数千万円の赤字が出た。新幹線では指定席券がもったいなくて自由席に乗る中田が、定期預金を解約して払った。「ギアリンクス10周年の年に、日本のミュージカルを日本人移民に、南米の人に見てほしい」。お金は命と思いながら「お金を使えて喜んでいる」と話す。

 仏教系の大学で学んだ中田は、講師を務めたあるセミナーで人生観を問われ、答えた。「目の前の人に差し上げて、見返りを求めないこと」。見返りは求めない。だが、夢や人脈など、南米はお金を払っても買えない多くのことを中田にもたらした。「最近、ようやく経営というものが少し分かってきた」。中田は満足そうに話す。(敬称略)

 =おわり=