村井 利昭氏(岐阜大工学部教授)

【学術部門】色を変える化合物生成
写真:村井 利昭氏(岐阜大工学部教授)

「化合物と光の世界は奥深い」と話す村井利昭教授。見いだした三成分連結法を基に新たな物質の合成を重ねている=岐阜市柳戸、岐阜大

 元素周期表で酸素と似た性質を持つグループに位置付けられた硫黄、セレン、テルル原子の特性を引き出し、利用することに情熱を傾け、外部刺激の変化で光り方を変える世界初の有機化合物を生み出すなど成果を上げてきた。

 岐阜大で学生と実験を重ねる中で、硫黄化合物とリチウム反応剤、マグネシウム反応剤を混ぜると単一の生成物ができることを発見。これはアルツハイマーやアレルギーの治療薬など医薬品で広く使われる有用物質の一つ「三級アミン」で、従来のような氷点下約80度という極低温でなくても作り出すことができた。

 この領域では、これら三つの分子を同時に結合させる「三成分連結法」は過去に例のない実績で、その後の岐阜大の研究の基礎となる技術となった。

 化合物の色に注目したきっかけは、工学博士となった直後に研究員としてテキサス大に赴任した際の研究。血中で酸素を運ぶヘモグロビンに含まれるタンパク質の基本骨格をモデルに人工分子を作ろうと試みた際、新たな緑色の化合物が合成できた。磁気共鳴画像装置(MRI)の造影剤などに利用されている物質で、無色透明な化合物が多い中、「色の世界の奥深さに気付いた」という。岐阜大に復帰後も、特殊な溶液に触れたり蒸気にさらされたりすると色を変える化合物を次々と生み出した。

 直近では硫黄と窒素の原子を組み込んだ新たな発光化合物の合成に成功。酸を混ぜると蛍光色は青からだいだいまで段階的に変わり、白も現れた。有機物であるため加工が容易で、照明やディスプレーなどの新製品の開発につながる可能性があると期待されている。

 「発想は単純に。閑散とした場から始めてそこが集いの場になるように」と、独自性の発揮を常に意識してきた。「研究の醍醐味(だいごみ)は発見。元素は分からないことばかりで今も探検のよう」と興味は尽きない。「真のイノベーションは期せずして出会うもの。探究を続け、新発見を見逃さない。それを実用化レベルまで育て上げたい」と意欲的だ。

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