ぎふ財界をけん引してきた古今のリーダーたち

出会いとともに ぎふ財界人列伝

会社はステージ

(10)

輝く社員が未来つくる

 「企業の営みは文化活動だと思っている。ものづくりも文化。クリエートするわけだから。社員それぞれが生きがいをもって働いてくれる、いいものをつくってくれる環境にするのが経営者の務めだろう」

写真:企業のあるべき姿を語る星野☆夫会長。FC岐阜後援会の会長、岐阜カンツリー倶楽部の理事長も務め、多忙な日々を送る。奥左は工場棟、右が新食堂

企業のあるべき姿を語る星野☆夫会長。FC岐阜後援会の会長、岐阜カンツリー倶楽部の理事長も務め、多忙な日々を送る。奥左は工場棟、右が新食堂

 “小粒でもピカッと光る企業”を目指す岐阜車体。会長の星野☆夫(てつお)(78)はメーカーが光り輝くための条件として、第一に品質保持と向上へのチャレンジ、第二にコスト改善、第三に社員にとって魅力ある会社の実現―を挙げる。

 「工場は皆が活躍してくれるステージ。これら三つの条件をクリアするため、経営者は活躍しやすいステージを用意しなければ。メーカーならそこに工作機械、工具といった大道具、小道具があり、働く人たちは演技者。社長はさしずめ演出家で、会長の私はプロデューサーだね」

 人事制度改革もステージづくりへの挑戦だ。「業績能力給の導入だけ、退職金制度の廃止だけでは意味がない。どういう考え方で改革するのか、コンセプトをしっかりさせないと改革につながらない。経営にはトップが責任を持つわけだから、ベストチームにはこういう人間が必要だと、トップが示すべき」

 2000年4月の構想発表から3年後に退職金制度を廃止し、確定拠出年金制度を開始。翌04年には業績能力給制度が本格化した。「改革は永遠の課題。大きな流れはつくったので、今は人事担当者と社会保険労務士の先生方が、リニューアルしている。06年にこの考え方をまとめた本『トップがチャレンジした人事改革』を出したが、2年後の16年ごろには『人事改革その2』を出したい」

 リーマン・ショックによる減産を受けて08年12月、10年の創立70周年に向け、70%操業でも経営が成り立つ収益改善活動「チャレンジ70」がスタートした。「この活動の結果、年間生産6万台で利益が出ていた体質を、4万5千台でも出せる体質に改善できた」

写真:社員食堂「sha−shock スマイル」の内部。天井にジャガイモやミニトマトなど食材の写真をあしらい、遊び心あふれたデザインで従業員の癒やしの空間になっている=いずれも各務原市鵜沼三ツ池町、岐阜車体工業

社員食堂「sha−shock スマイル」の内部。天井にジャガイモやミニトマトなど食材の写真をあしらい、遊び心あふれたデザインで従業員の癒やしの空間になっている=いずれも各務原市鵜沼三ツ池町、岐阜車体工業

 現在は20年の80周年に向けた「チャレンジ80」に入って4年目。2年刻みでレベルアップしていく挑戦テーマは13。▽トヨタグループナンバーワンの生産技術力の構築▽ハイエース世界拡販への挑戦▽川の流れ人事の進化―など本業に関するもののほか、▽勤めれば健康になる会社▽来るのが楽しみになる会社▽岐阜車体ファンを増やそう―といった社員の健康や福利厚生、社会貢献の分野にも力を入れる。

 「会社は法人として認知された時から誰のものでもない“社会のもの”。株主も経営者も社員も、その観点からそれぞれの役割をしっかり持つべきだと思う」

 星野の基本的な考えだ。「会社が利益を出し、社会に還元することは当たり前のこと。利益が出せない、税金すら払えないのは会社と言えないのでは」

 そんなコンセプトによる「チャレンジ80」。大きな成果が挙がりつつあるのが健康の分野だ。保健師を中心にしたスタッフが、健康診断を基にした改善の取り組みを地道に続けている。星野は「“健康経営”をキーワードにして拡充させたい」と見据える。

 福利厚生では社員食堂を“来るのが楽しみになる会社”にするためリニューアル。健康にも留意した明るくおいしい「sha―shock(シャ・ショック)スマイル」が誕生した。

 そして地域貢献。「騒音など迷惑を掛けないのは当然のこと。迷惑を掛けないという目標と、近所の人たちに岐阜車体ファンになってもらうという目標ではレベルが全く違う」

 工場見学や新食堂試食会、労組による夏まつりなど、住民に会社を開放して会社を知ってもらった。「感動した」「息子を岐阜車体に入れたい」との声も寄せられた。

 星野はこう言ってインタビューを締めくくった。「社会にとって価値ある企業に育てることが、経営者の役割でしょう」

(敬称略)

=おわり=

(注)☆は金ヘンに矢

 ※この企画は編集委員加藤真人が担当しました。

▽参考文献 「創造限りなく」トヨタ自動車50年史、同社ホームページ内75年史、十六銀行百二十年史、岐阜車体工業70年史「70年のあゆみ・であい」、「人生、遊び心」(星野☆夫著)、「トップがチャレンジした人事改革 『溜め池人事』から『川の流れ人事』へ」(同)