こんにちは、吉村です。私の執筆回では「脳卒中予防に関する最新情報」を紹介しています。皆さん、一緒に勉強しましょう!

 執筆の1回目では、「くも膜下出血の原因である脳動脈瘤(りゅう)がないかどうかをMRI(磁気共鳴画像装置)で検査しましょう」と書きました。その後、多くの方から「見つかった場合にはどうしたら良いのか?」と質問を受けました。そこで今回は、未破裂の動脈瘤が見つかった場合の対処法について紹介します。

 脳の血管が膨らんだ状態を脳動脈瘤といいます。膨らんだ部分の血管の壁は、おもちが膨らんだ時のように薄くなっていることが多いのです。このため、血圧に耐えきれずに破裂して「くも膜下出血」を起こしてしまうことがあります。

 いったん、このくも膜下出血になると、手術などを行っても3分の1ぐらいの人しか社会復帰できません。とても怖い病気です。それでは動脈瘤が見つかった場合、どのぐらいの確率でくも膜下出血になるのでしょうか?

 答えは年間1%です。「え、たった1%ですか?」という声が聞こえてきそうです。そう、たった1%です。しかしこれは1年間の確率ですから、その後、余命がどのぐらいあるかが重要です。

 あくまで目安ではありますが、10年の余命がある人は生涯で1%×10年=10%ほど、50年の余命がある人は1%×50年=50%ほどの破裂率が見込まれます。

 また、動脈瘤が大きいほど破裂率が高くなることも知られています。以上を総合すると、若いほど、そして動脈瘤が大きいほど、破裂する確率が高いということになります。

 では治療法にはどんなものがあるのでしょうか。現在、破裂予防の薬はありません。このため予防には手術が必要です。これには切る手術と切らない手術があり、どちらも95%程度の成功率といわれています。かなり安全な感じがしますが、逆に見れば5%程度の人に合併症が起きるということです。

 つまり、手術をしない場合にはくも膜下出血のリスク、手術をする場合には合併症のリスクがあるのです。このため、多くの方が迷われます。まさに人生の分岐点となる選択ですから、ご家族の皆さんもぜひ面談などに参加して、全面的にサポートしてあげてくださいね。

 (岐阜大学医学部付属病院臨床教授 岐阜大学脳神経外科医・吉村紳一氏)