整形外科医 今泉佳宣

 はじめまして、朝日大学村上記念病院整形外科の今泉佳宣といいます。整形外科のコラムを担当することになりました。よろしくお願いします。

 今回は腰痛の話をします。腰痛は、整形外科を受診する患者さんの症状で最も多いものですが、まだまだわからないことが多い症状でもあります。腰痛は、X線写真やMRIなどの検査をおこなって異常の見つかる特異的腰痛と、検査に異常のない非特異的腰痛に分けられます。非特異的腰痛は腰痛全体の実に85%を占めるといわれています。そして非特異的腰痛のことをいわゆる腰痛症といいます。腰痛症は急性と慢性に分けられます。急性腰痛症の90%は6週間以内に自然に治るので、大きな問題となることはありません。一方、発症から3カ月以上経過するものを慢性腰痛症といい、これまで有効な治療法がなく、整形外科医を悩ませてきました。

 慢性腰痛症は、検査をおこなっても異常がみつからないために、医師が患者さんに痛みの原因を明確に説明できません。原因のわからない腰痛に対して、患者さんは不安になり、いろいろな医療機関を訪れるというドクターショッピングを繰り返すことがあります。残念ながら、現在でも慢性腰痛症の原因は、はっきりとはわかっていません。しかし、最近の研究で、慢性腰痛症が患者の心理的、社会的因子と関係していることがわかってきました。平たく言うと、ストレスが腰痛に関係しているということです。

 ストレスがあり気分がすぐれないときには、腰痛が強くなり、逆にストレスが解消されると腰痛がやわらぐという事例があります。腰痛に限らず体の痛みは脳で認識されるため、ストレスがあると、脳が腰の痛みを感じやすくなると考えられています。

 したがって、最近は慢性腰痛症に対する治療として、精神・心理学的アプローチによる治療が行われています。患者さんの抱えるストレスや悩みに医師が耳を傾け、患者さんに不安や悩みを話してもらい、気持ちを楽にしてあげることで、腰痛の軽減をはかるというものです。一種のカウンセリングともいえるこの方法は、一部の患者さんには有効です。しかしすべての患者さんに有効なわけではありません。実際にはこれを単独で用いるわけではなく、従来からおこなわれている薬物療法や運動療法などを組みあわせて治療にあたります。

 次回はそうした慢性腰痛症の治療を具体的に示してみたいと思います。

(朝日大学村上記念病院准教授)