岐阜大学皮膚科医 周円

 薬は病気を治す半面、副作用を伴うことも良く知られています。今回は副作用の一つである薬疹についてお話しします。

 薬疹とは、薬剤によって引き起こされるアレルギー性発疹のことです。通常、次のような仕組みで起こると考えられています。一部の人において、特定の薬剤が体内に入って1〜2週間で薬剤に反応する免疫細胞が出現し、皮膚に発疹が現れます。以降、薬剤が再度体内に入った時には、数日で発疹が出ます。ただし、薬剤によっては共通した成分や化学構造の似た成分が含まれることがあります。この成分に対してアレルギーを持っている場合、それが含まれる別の薬を初めて使う時でも薬疹は出ます。

 薬疹には軽いかゆみを伴う発疹が現れ、薬をやめるだけで治る軽いものもあれば、中毒性表皮壊死(えし)症、スティーブンス・ジョンソン症候群や薬剤性過敏症症候群のように、高熱、全身の皮膚や粘膜にみられる発疹、肝臓や腎臓などの内臓障害を伴う重症型もあります。重症薬疹は人口100万人あたり年間3、4人の割合で発症し、最も重症とされる中毒性表皮壊死症では、全身に水ぶくれやびらんができる結果、広範囲の皮膚で二次感染を生じるだけでなく、体に必要な水分やたんぱく質が傷から失われるため、死亡率は約2割にも達します。

 重症薬疹の統計を見ますと、原因薬剤は抗菌薬や解熱鎮痛消炎剤に高い傾向がみられますが、薬疹はアレルギー反応のため、薬の種類というよりは、個人の薬剤に対する反応性によるところが大きいです。言い換えれば、誰に何の薬で薬疹が起こるのかは予測不可能です。しかし、重症薬疹の予後が非常に悪いことを考えますと、できる限り薬疹の発症を防ぎ、重症薬疹まで発展させないことが大切だと考えられます。

 そのためには、まず、これまでに薬による副作用の経験が少しでもある場合には、医療機関や薬局を利用する際に必ずその旨をお伝えください。原因薬剤そのものだけでなく、後発品や同じ成分が含まれている、他の薬剤を間違えて処方されないためです。

 次に、飲み薬などで発疹が出た場合、できるだけ早めに医師の診察を受けてください。特に広範囲の発疹とともに、熱が出たり食欲が落ちたり、体がだるいと感じる場合は重症薬疹の可能性もあるので速やかに皮膚科医にご相談ください。原因となる薬を明らかにし、二度と処方されない、飲まないようにすることが重症薬疹の予防につながります。

(岐阜大学医学部皮膚病態学講師)