岐阜大学皮膚科医 佐藤三佳

 皮膚がんの中には、初期には湿疹と区別がつきにくいがんがあります。今回はその中の代表格である、乳房外パジェット病(乳房外ページェット病と呼ばれることもあります)についてお話しします。

 ちょっと名前が変わっていますね。「パジェット」というのは、この病気を最初に報告した人の名前です。パジェット病はパジェット細胞という特徴的な形態をしたがん細胞が皮膚で増殖する病気で、乳頭部に出る「乳房パジェット病」と、主に外陰部、わきの下、肛門周囲の皮膚にできる「乳房外パジェット病」に大きく分けられます。なぜ、乳房と乳房以外に分けられているかというと、乳房パジェット病は乳がんの特殊型として捉えられているためで、治療は主に乳腺外科で行われます。皮膚科で扱うのは乳房以外にできる「乳房外パジェット病」です。

 この病気を理解するために、まず皮膚の構造を簡単に説明します。皮膚は外側から表皮、真皮、脂肪組織という3層構造になっています。最外層の表皮は0・2ミリほどの厚さで外界の刺激から体を守っています。パジェット病は、初期にはこの表皮内でがん細胞が増殖するのが特徴で、表皮内のみにがん細胞がある状態を「表皮内がん」といいます。表皮内がんの状態であれば転移はしませんが、がん細胞が表皮の下の真皮に浸潤すると、真皮には血管やリンパ管がたくさんありますので、血流やリンパ流に乗って転移を起こし、命にかかわります。そのため、表皮内がんのうちに発見し、手術で取り除いてしまうことが重要です。

 乳房外パジェット病は、全皮膚がんの10%を占めるとされており、高齢男性に多い病気ですが、女性の発症もあります。ほとんどが外陰部にでき、初めは湿疹に似た赤色から茶色の斑で、時に白っぽい斑のこともあります。小さい斑が徐々に大きくなって、進行すると表面がただれたり、盛り上がってきてしこりを作ったりします。初めは湿疹やたむしと区別がつかないことから受診が遅れてしまったり、外陰部という部位から受診をちゅうちょしてしまい、進行した状態になるまで放置してしまう場合もあります。

 治療は手術で切除するのが基本ですが、切除不能例には放射線治療を行い、遠隔転移を起こしている場合は抗がん剤の治療を行うこともあります。表皮内がんのうちに切除してしまえば特に追加の治療は必要なく、根治が望めます。外陰部の赤い斑が治らない場合は乳房外パジェット病の初期の可能性もありますので、放置せずに皮膚科専門医に相談しましょう。

(岐阜大学医学部付属病院皮膚科臨床講師)