

村田教諭は幼少期から好奇心旺盛だった。中身を知りたくて乾電池を割ったり、竹とんぼや紙飛行機を作ったりして遊んだ。どうして回転しながら竹が上昇し、紙細工が空を飛ぶのか。理科を学ぶにつれ、疑問や謎は宇宙や世界の仕組みにつながり、そこに物理の法則があることが分かってきた。自然科学の素晴らしさに胸ときめかせた高校時代。理論・実験のいずれが欠けても物理学は成立しないことを実感した大学時代。教師になって生徒たちと向き合ってからは、自らの子ども時代に比べ、「物と触れ合う経験・遊びの体験が少なくなったのでは」とも感じるようになった。

授業開きでは、村田教諭が木の棒で見事に陶製の皿を回すと生徒たちの目がくぎ付けに。引き続き皿替わりのクッキー缶のふたで生徒たちが挑むと、「皿回しにもコツがある。回転し続けるものはジャイロ(こま)効果で安定する」「実験をすると紙の上での理論がストンと腹に落ちる。物理は何も特別なことではなく、身近な生活に横たわっている。体で感じることが大切なんだ」などとアドバイス。さらに、皿回しのほか筒状の紙を回転させつつ真っすぐ飛ばしたり、こまを付けた倒れない二輪車も走らせたりした。
この日、かつて公民館で体験した皿回しの指導者が村田先生だったことを知った深尾圭貴君(1年)は、「皿回しを教えてくれた人が村田先生だったなんてびっくり。今日の実験も楽しく、身の回りへの関心が高まった」。村山由季さん(同)は、「物理は難しいとの先入観があったが、決して遠い世界のことではなく暮らしに深くかかわっていることが分かった」と感想を語った。
村田教諭は、「科学の面白さを伝え、授業を楽しんでもらおう」と県内の物理教諭らでつくる「岐阜物理サークル」のメンバーの一人でもある。サークル発行のガイドブックもすでに4冊。教え子が教師になり相談も受けるようになった。「高校物理雑記帳」をまとめたのも、「物理専門の教師が1人という学校もある。若い先生が誰にも相談できず行き詰まってしまわないように」との願いも込められている。
「科学に携わる者として自然に対し謙虚でいたい」と村田教諭。「物理は崇高だけれど、敬遠するものではない」。生徒たちには、「自分の知識、経験で物事を判断できる人になってほしい。効率を求めるだけでなく、道草したほうが人生も豊かになるもの。学問も同じなんです」と。実験を通して感じる学ぶ喜び―。「それが生きていくための大切な経験につながる」と確信している。
(神保絵利子)