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物理、頭と体で学ぶ/岐阜高校・村田教諭の授業

皿回しで理論を「感じる」

2012年 4月30日

物理の「授業開き」恒例となった皿回し。村田憲治教諭(左)に続いて挑戦する1年生。これもジャイロ効果の応用だ=岐阜市大縄場、岐阜高校
物理の「授業開き」恒例となった皿回し。村田憲治教諭(左)に続いて挑戦する1年生。これもジャイロ効果の応用だ=岐阜市大縄場、岐阜高校
 「物理の面白さは頭だけでなく、体で感じてほしい」。岐阜高校で物理を担当する村田憲治教諭(53)は語る。「机上の学問で終わらせず、世界の仕組み、科学の大切さをつかんでほしい」と、工作や実験を取り入れた授業も20年以上になる。昨年は「若い先生たちにも役立ててもらえれば」と、授業の進め方や実験の見せ方を紹介したアイデア集「高校物理雑記帳」(工学社刊)も出した。スタートしたばかりの新年度。新1年生の授業開きでは“皿回し”なども披露し、生徒たちの緊張感を驚きと感嘆の声に変えた。

 村田教諭は幼少期から好奇心旺盛だった。中身を知りたくて乾電池を割ったり、竹とんぼや紙飛行機を作ったりして遊んだ。どうして回転しながら竹が上昇し、紙細工が空を飛ぶのか。理科を学ぶにつれ、疑問や謎は宇宙や世界の仕組みにつながり、そこに物理の法則があることが分かってきた。自然科学の素晴らしさに胸ときめかせた高校時代。理論・実験のいずれが欠けても物理学は成立しないことを実感した大学時代。教師になって生徒たちと向き合ってからは、自らの子ども時代に比べ、「物と触れ合う経験・遊びの体験が少なくなったのでは」とも感じるようになった。

昨年まとめた「高校物理雑記帳」を手にする村田教諭=同
昨年まとめた「高校物理雑記帳」を手にする村田教諭=同
 生徒たちに深くかかわる者として伝えるべきは何かを問う日々が続いた。「“面白い”が科学への扉を開く。頭だけでなく、体を使うと物理も親しみやすくなる」と、授業に実験や工作をふんだんに取り込んだ。

 授業開きでは、村田教諭が木の棒で見事に陶製の皿を回すと生徒たちの目がくぎ付けに。引き続き皿替わりのクッキー缶のふたで生徒たちが挑むと、「皿回しにもコツがある。回転し続けるものはジャイロ(こま)効果で安定する」「実験をすると紙の上での理論がストンと腹に落ちる。物理は何も特別なことではなく、身近な生活に横たわっている。体で感じることが大切なんだ」などとアドバイス。さらに、皿回しのほか筒状の紙を回転させつつ真っすぐ飛ばしたり、こまを付けた倒れない二輪車も走らせたりした。

 この日、かつて公民館で体験した皿回しの指導者が村田先生だったことを知った深尾圭貴君(1年)は、「皿回しを教えてくれた人が村田先生だったなんてびっくり。今日の実験も楽しく、身の回りへの関心が高まった」。村山由季さん(同)は、「物理は難しいとの先入観があったが、決して遠い世界のことではなく暮らしに深くかかわっていることが分かった」と感想を語った。

 村田教諭は、「科学の面白さを伝え、授業を楽しんでもらおう」と県内の物理教諭らでつくる「岐阜物理サークル」のメンバーの一人でもある。サークル発行のガイドブックもすでに4冊。教え子が教師になり相談も受けるようになった。「高校物理雑記帳」をまとめたのも、「物理専門の教師が1人という学校もある。若い先生が誰にも相談できず行き詰まってしまわないように」との願いも込められている。

 「科学に携わる者として自然に対し謙虚でいたい」と村田教諭。「物理は崇高だけれど、敬遠するものではない」。生徒たちには、「自分の知識、経験で物事を判断できる人になってほしい。効率を求めるだけでなく、道草したほうが人生も豊かになるもの。学問も同じなんです」と。実験を通して感じる学ぶ喜び―。「それが生きていくための大切な経験につながる」と確信している。

(神保絵利子)