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子どもの主体性を育成/須本良夫・岐阜大教授

新聞記事でミニ討論 意味や意図、自ら考える

2017年 1月 9日

新聞記事の切り抜きに子どもの意見文が貼られた掲示物=岐阜市加納大手町、岐阜大付属小学校
新聞記事の切り抜きに子どもの意見文が貼られた掲示物=岐阜市加納大手町、岐阜大付属小学校
 昨年11月末、2015年の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で小中学校の理数全てが過去最高点となり文部科学省は「脱ゆとり教育」路線に自信を深めたと、報道されました。

 ほぼ同時期、今度は新聞各紙1面で、学習到達度調査(PISA)が公表されました。記事の中心は、読解力の低下でした。日本は同調査を過去2回連続で平均点、順位とも上げていたため、03年に多くの分野で順位を下げたPISAショックも落ち着いていたのですが、今回の低下によって、読解力の議論が再燃しかねません。

 議論再燃の要因は、実は二つあります。一つは、本年度の学力調査での算数B問題において、説明力の不足が改めて浮き彫りになったことです。三角定規(90・60・30度)を二つ合わせできた二等辺三角形に関連し、並べてできた形、角の大きさをもとに「360÷120」の意味を説明する記述問題があったのです。この正答率が7%にとどまりました。もう一つが、大学入試改革の議論です。中心となっている国立大学協会は、12月に国立大の2次試験について、国語を中心に全受験生に記述式問題を課す方向だと報道されました。

 あえて言うなら、教育で一喜一憂など問題外。教育の結果は時間のかかるもの。わが国の読解力の国際順位など、その程度なのだとあせらず構えたいところです。ですが、報道だけを読み解けば、ゆったり構えてはいられない状況となりそうですね。入試改革に記述が入り、実際に説明力が弱いのであれば、新しい学習指導要領対応の中でも何とかしろといった外圧が学校の先生たちへ押し寄せそうです。

 そんなことを考えながら年末の小学校を歩いていると、廊下ですてきな取り組みに出会えました。高齢者の事故を扱った新聞記事の横に、子どもの意見文が貼られた掲示物です。

 早速、6年生の先生に尋ねてみました。すると、一人一人が論争の起こりそうな記事について、記事とコメントを持ち寄り、朝の会で発表して、ミニ討論を繰り返しているとのことでした。ポケモンGO(ゴー)、アメリカの大統領選挙から身近な中学の制服や捨て犬問題まで、いろいろな話題が持ち込まれるようです。授業ではないので、その問題について子どもたちの琴線に触れた部分だけで、盛り上がっているのでしょう。教育的ではないという方もいるでしょうが、出来事の背景は、後追い記事として解説されていきます。「後日、こだわりのある記事は、子どものほうから持って来るのです。そこで、また話が盛り上がるんです」と、担任の先生が言われました。小学生だから分からないではなく、小学生だって気になることは分かりたいのです。決して結果を焦らない、子どもたちの主体性を育成するすてきなNIEの取り組みです。

 新聞は記事の向こうにどんな意味や意図があるのか、社会や書き手と対話をさせることができます。家ではそんな新聞の読み方できません。だから、学校教育でやるのです。テキストと向き合うように仕向けることこそ、教師の仕事であり、それが結果になるのが教育という営みです。大きな教育の潮流はあるかもしれませんが、先生たちを信頼しましょう。しっかり、やっておられます!