池ケ原湿原の自然を観察する児童ら=飛騨市宮川町
宮川小学校で学ぶ7人の児童=飛騨市宮川町

 岐阜県飛騨市宮川町にある宮川小学校の児童数は7人だ。1年生が男児2人、3年生と5年生が男児1人ずつ、そして6年生が女児3人。2年生と4年生はいない。複式学級の2クラスがあり、1年生と3年生、5年生と6年生で編成。教諭は4人が常駐する。

 同校の教育の最も重要なテーマは、児童一人一人が自ら考えて行動する人になり、幸せな人生を歩むことができるよう学ぶこと。そのためには自分の良さを知ってさらに磨き、個性を周りの人に分かってもらいつつ、周りの人のことも理解してつながりながら活動することが大切という。

 良さを磨くには、自分の願いがかなうように主体的に行動し、その成果から自身の成長を自覚することが必要となる。周りの人との相互理解は、認め合いながら人間性を高めていく「かかわり合う力」と同校が呼ぶ力を養う。そうした力を体得するのに、学力と体力の向上は欠かせない。

 学力と体力は少人数での授業で教諭が向上に導く。ここで教諭は児童の主体性を育むため、疑問などを児童自らが仲間や教諭に問い掛けることができるように見守りながら指導する。

 一方で「かかわり合う力」を養うには、児童が多様な考え方に触れなければならない。小規模校だけに児童が外部の人たちとより多く会えるよう、学校生活を整える。コロナ禍でオンラインでの交流も増えたが、多くの人と顔を合わせて会話するような機会を積極的に設けている。

 活用するのは主に1年生が生活科、3年生以上は総合学習の時間に行う「ふるさと学習」だ。宮川が流れ、縄文時代の遺跡がある宮川町の自然、歴史、暮らし、文化、産業などから児童が関心事を選び、研究課題として資料を収集。自ら計画を立てて現地を訪ね、地元の人から聞き取りをして報告書にまとめ、児童全員の成果を載せた冊子を作って町内に配布する。

 前年度に児童がふるさと学習で取り組んだテーマは郷土料理、民話、民踊、宗教、産業、災害などで、料理人を志す児童は地元の料理研究家と会い、他の児童は自宅近くの神社を訪ねて信仰への理解を深め、別の児童は飛騨牛を育てている人の思いを知った。

 5年生時に地元の民話を調べ、「お地蔵さまと子ども」を題材に紙芝居を作った6年生の児童は「民話は口伝で残されてきたが、伝える人が少なくなり、記録をしておくことが大切と思い、紙芝居にした。保育園や福祉施設で披露したい」と話した。

 児童は市内の保育園児と小中学生、高校生、道化師、書道家、音楽家など年齢や居住地も異なる人たちと交流し、話をしてきた。そうした外部の講師の紹介などを地域の人たちが参加する同校の学校運営協議会と地域学校協働本部が行い、学校運営を支えている。

 本年度、児童は町内にある名勝の池ケ原湿原を自然案内人と歩き、宮川では川の機能と鮎の生態を学んだ。続いて、探究する個人のテーマを決めて活動する。

 同校の児童はそれぞれに夢があり、宮川町の宝物を見つめることで故郷への愛着を深め、培った学力と体力、かかわり合う力で願いをかなえるための準備を進めている。